ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
報文
リグノフェノールの光励起エネルギー移動の評価
青栁 充井上 咲良
著者情報
ジャーナル 認証あり

2025 年 46 巻 2 号 p. 58-66

詳細
抄録

針葉樹ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)と広葉樹イタリアンポプラ(Populus nigra var. italica)から縮合・ランダム共役がすくないリグノフェノール(p-cresol type, LC)と140 ℃,170 ℃で作り分けた縮合,共役の分布が異なるアルカリリグニン(AL)を調製しFT-IR,1H-NMR,SEC による構造解析後,UV-Vis,蛍光分析,励起スペクトル測定,蛍光同調スペクトル測定,アセトフェノンを用いた消光解析を試みた。褐色の溶液のUVVisでは400 nm 以上の吸収は少なく,極大吸収の280 nm で励起した結果,樹種,調製法で差があるが300-600 nm に幅広い蛍光を示した。極大発光波長となった390 nm の蛍光の励起スペクトルを測定しUV-Vis と比較すると多段階のエネルギーレベルを通じた緩和過程がみられAL はより低エネルギーの発光を示した。蛍光同調スペクトルの結果,異なるStokes シフトの蛍光の重複が見られた。アセトフェノンを用いたStern-Volmer 消光解析の結果AL のStern-Volmer 係数はいずれも同じであったがLC はAL より高く,広葉樹は針葉樹の2 倍の傾きを示しエネルギー移動しやすいことを見出した。樹種や高分子構造中の縮合構造,局在化した共役系と,相互作用による高分子の高次構造がこれらのエネルギーの多段階緩和にかかわっていることが示された。

著者関連情報
© 合成樹脂工業協会
前の記事 次の記事
feedback
Top