2025 年 46 巻 2 号 p. 85-97
リン含有高分子材料はその特異な性質を活かし,幅広い分野で研究・実用化されている。その機能中心であるリン含有官能基は多彩な構造を取りうるが,本総説では特に,リン-硫黄間に直接結合を有するホスフィンスルフィド(P=S)基をもつ高分子材料に焦点を当て,その合成と特性を概説した。それら高分子材料は,P=S 基の優れた熱的・化学的安定性,遷移金属への配位性,高い分子屈折,低極性などの特長を反映し,難燃性材料,高分子配位子,高屈折率材料,低複屈折材料,低誘電材料として優れた特性を発現し,一部では従来のリン含有高分子材料を超える性能を示した。今後,これらの材料を電子・光学用途において実用化を図る上では,ネットワークポリマー材料への展開が重要性を増してくるものと考えられる。