抄録
フェノールとホルムアルデヒドの樹脂生成反応に関して,量子化学の観点から検討した。B3LYP / 6-31+G(d) レベルの CPCM 計算により,分子軌道とエネルギー準位を算出した。フロンティア軌道理論に基づき,酸触媒や塩基触媒の反応系において実際に反応している化学種を予測した。気相中のエネルギー準位を計算した結果には矛盾が見られたが,水溶液の溶媒効果を考慮した CPCM 計算のエネルギー準位はフロンティア軌道理論に適用できた。その結果をもとに,酸触媒の反応系ではメチロールカチオンがフェノールと反応する化学種であり,塩基触媒の反応系ではフェノラートがホルムアルデヒドと反応する化学種であると予測した。また , 反応過程のエネルギー変化を計算し,反応中間体の安定性が ortho 位と para 位の反応性の支配要因であることを示した。