抄録
感温性のエラスチン類似ペプチド(ELP)を架橋部位とするポリアクリル酸(PAA)ネットワークポリマーを新規に合成した。まず両末端に重合性のメタクリルアミド基をもつELP を固相合成法により合成し,アクリル酸とラジカル共重合することにより,架橋率の異なる2 種のネットワークポリマー(PAA-ELP(1%)とPAA-ELP(2%))を調製した。水への溶解性,二次構造ならびに会合特性を調べたところ,PAA-ELP(1%)では,ELP 部位のコンフォメーション転移に伴って上限臨界溶液温度(UCST)型の相転移現象を示すことを見出した。架橋率の高いPAA-ELP(2%)ではハイドロゲルを形成し、特定のpH 領域においては、膨潤率が顕著な温度依存性を示した。またこのハイドロゲルに酵素パパインを作用させることにより,ELP 部位の分解によるゾル状態への変換が容易にできることを明らかにした。