ジアリルフタレート樹脂は,その優れた物性から電子部品封止材料や電気部品など高信頼性,耐久性が要求される分野で使用されているが,金属に対する接着性や靭性に劣るために,その改善が望まれている。著者らは,ジアリルフタレート樹脂の接着性や靭性向上のために各種の改質剤を合成,添加したり,エポキシ樹脂とのブレンドなどによりジアリルフタレート樹脂の変性を行ってきた。本解説では,著者らが行ってきた研究例を中心に紹介する。ジアリルフタレート樹脂は,耐熱性,高温高湿下における電気絶縁性,寸法安定性,耐薬品性,成形加工性に優れていることから,電気・電子部品や成形材料,塗料,最近では携帯電話,パソコンに使用される電子部品封止材料として使用されている
1), 2)。最近の電子機器の軽量薄型化に伴い,電子部品封止材料は従来品のように電子部品全体を覆うパッケージ状の形状から,電子部品の一部のみを覆うように変化し,その形状が複雑化する傾向にある。そのために封止材料には今まで以上にリードフレームなどの金属に対する接着性が要求されている。また,航空機・自動車・船舶用電気部品には,マイナス領域の温度からエンジン始動時の120℃前後までの可逆的な温度負荷がかかる。このような可逆的な温度負荷条件下で樹脂の靭性が劣ると,温度変化を繰り返すことによって発生した部品内部の亀裂,あるいは成形加工時に生じた部品内部の亀裂が成長して最終的に部品の破壊に至るために,靭性の向上が望まれている。他樹脂の変性にジアリルフタレート樹脂が用いられている場合はある
3)-6)が,ジアリルフタレート樹脂そのものの変性に関する研究例は少ない。そのうち靭性向上に関するものとしては,松本らがグリコールユニットを持つアリル化合物をジアリルフタレート樹脂の架橋剤として用いている
7)。ジアリルフタレート樹脂への柔軟なユニットの導入により破壊エネルギーが増大し,特に長鎖グリコールユニットを導入した場合に顕著な効果をもたらした。Cho らは,ポリアリレー
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