ネットワークポリマー
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31 巻, 6 号
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報文
  • Hisatoyo Morinaga, Asami Matsumoto, Tsukasa Matsuda, Daisuke Nagai, Ta ...
    2010 年31 巻6 号 p. 272-277
    発行日: 2010/11/10
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    The ring-opening polymerization of glycidyl phenyl ether (GPE) and an epoxy curing reaction of bisphenol A diglycidyl ether (BADGE) were performed with metal-free tetra-n-butylammonium halides (TBAX); the anions included fluoride, chloride, bromide, and iodide. We compared the extent of polymerization achieved as a result of using different TBAX as initiators. The comparison revealed that tetra-n-butylammonium fluoride (TBAF) was the most efficient initiator for both the polymerization of GPE and the epoxy curing reaction of BADGE.
  • 古賀 智之, 深見  史郎, 東 信行
    2010 年31 巻6 号 p. 278-288
    発行日: 2010/11/10
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    感温性のエラスチン類似ペプチド(ELP)を架橋部位とするポリアクリル酸(PAA)ネットワークポリマーを新規に合成した。まず両末端に重合性のメタクリルアミド基をもつELP を固相合成法により合成し,アクリル酸とラジカル共重合することにより,架橋率の異なる2 種のネットワークポリマー(PAA-ELP(1%)とPAA-ELP(2%))を調製した。水への溶解性,二次構造ならびに会合特性を調べたところ,PAA-ELP(1%)では,ELP 部位のコンフォメーション転移に伴って上限臨界溶液温度(UCST)型の相転移現象を示すことを見出した。架橋率の高いPAA-ELP(2%)ではハイドロゲルを形成し、特定のpH 領域においては、膨潤率が顕著な温度依存性を示した。またこのハイドロゲルに酵素パパインを作用させることにより,ELP 部位の分解によるゾル状態への変換が容易にできることを明らかにした。
  • 及川  尚夫, 吉田 一浩, 依田  昌子, 山廣  幹夫, 宮下  徳治
    2010 年31 巻6 号 p. 289-298
    発行日: 2010/11/10
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    透明性,耐熱性の高いダブルデッカー型シルセスキオキサンをベースポリマーとして,表面改質効果を有するパーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンを複合化することにより,耐熱・光学コーティング膜を作製した。得られたコーティング膜は,接触角測定による表面特性,分光透過率測定による光学特性,熱重量分析による熱物性評価を行い,表面特性制御効果,及びバルク特性への影響を評価した。その結果,わずかなパーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンの添加により,膜の表面特性をコントロールできることが確認された。また,得られたコーティング膜の透明性,耐熱性は,パーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンの添加による低下は見られず,バルク特性にはほとんど影響しないことが分かった。更に,得られたコーティング膜は近紫外線領域の透明性が高く,近紫外線の吸収の少ないことによる耐光性に優れた膜であることが示めされた。また,得られたコーティング膜の樹脂成分は300℃以上の耐熱性を有しており,優れた耐熱性,透明性を保持しつつ,かつ表面特性のみをコントロールすることができることが確認された。
  • 北村 あい, 杉  裕紀, 大山  俊幸, 高橋  昭雄
    2010 年31 巻6 号 p. 299-307
    発行日: 2010/11/10
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    シアナート樹脂中において,改質剤N- フェニルマレイミド-スチレン交互共重合体(PMS コポリマー)に架橋剤としてジビニルベンゼン(DVB)を添加した架橋型PMS(PMSD)をin situ 重合することで,シアナート樹脂の靭性の向上を試みた。その結果,架橋剤DVB 5mol% を添加した改質剤PMSD を10wt% 用いたとき,未改質系と比較してKIC の値が77% 向上した。また,このとき曲げ特性は向上し,ガラス転移温度も高くなる傾向を示した。改質硬化物破断面の原子間力顕微鏡(AFM)観察により,改質剤PMSD がシアナート樹脂マトリックス中に200 ~300nm のオーダーで分散している様子が確認された。PMS に架橋剤としてDVB を添加することで,改質剤がより細かくシアナート樹脂マトリックス中に分散し,シアナート樹脂の強靭化が達成されることが確認された。 また加熱硬化過程における反応について調べた結果,DSC およびIR 測定により改質剤のラジカル重合が進行したものと推定された。さらに,IR 測定結果から改質剤のラジカル重合反応とマトリックス樹脂の硬化反応が,相互に阻害することなく進むことが確認された。
総説
  • 大塚 恵子
    2010 年31 巻6 号 p. 318-323
    発行日: 2010/11/10
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ジアリルフタレート樹脂は,その優れた物性から電子部品封止材料や電気部品など高信頼性,耐久性が要求される分野で使用されているが,金属に対する接着性や靭性に劣るために,その改善が望まれている。著者らは,ジアリルフタレート樹脂の接着性や靭性向上のために各種の改質剤を合成,添加したり,エポキシ樹脂とのブレンドなどによりジアリルフタレート樹脂の変性を行ってきた。本解説では,著者らが行ってきた研究例を中心に紹介する。ジアリルフタレート樹脂は,耐熱性,高温高湿下における電気絶縁性,寸法安定性,耐薬品性,成形加工性に優れていることから,電気・電子部品や成形材料,塗料,最近では携帯電話,パソコンに使用される電子部品封止材料として使用されている1), 2)。最近の電子機器の軽量薄型化に伴い,電子部品封止材料は従来品のように電子部品全体を覆うパッケージ状の形状から,電子部品の一部のみを覆うように変化し,その形状が複雑化する傾向にある。そのために封止材料には今まで以上にリードフレームなどの金属に対する接着性が要求されている。また,航空機・自動車・船舶用電気部品には,マイナス領域の温度からエンジン始動時の120℃前後までの可逆的な温度負荷がかかる。このような可逆的な温度負荷条件下で樹脂の靭性が劣ると,温度変化を繰り返すことによって発生した部品内部の亀裂,あるいは成形加工時に生じた部品内部の亀裂が成長して最終的に部品の破壊に至るために,靭性の向上が望まれている。他樹脂の変性にジアリルフタレート樹脂が用いられている場合はある3)-6)が,ジアリルフタレート樹脂そのものの変性に関する研究例は少ない。そのうち靭性向上に関するものとしては,松本らがグリコールユニットを持つアリル化合物をジアリルフタレート樹脂の架橋剤として用いている7)。ジアリルフタレート樹脂への柔軟なユニットの導入により破壊エネルギーが増大し,特に長鎖グリコールユニットを導入した場合に顕著な効果をもたらした。Cho らは,ポリアリレー
  • 英 謙二, 星沢 裕子
    2010 年31 巻6 号 p. 308-317
    発行日: 2010/11/10
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    増粘剤,ゲル化剤と呼ばれる低分子化合物について紹介した。増粘剤は溶媒に添加することでその粘性を上げる働きをするものであり,ゲル化剤は溶媒をゲル化(固化)することのできる化合物である。増粘化やゲル化の原動力は水素結合,静電相互作用,ファンデルワールス力,π-π相互作用などの非共有結合である。ゲル化が起きるときは水素結合やπ-πスタッキング,ファンデルワールス力などを通してゲル化剤分子が自己集合し高分子様の会合体を形成する。結晶化とゲル化は親密な関係にあることを述べ,その類似点と相違点を詳述した。増粘現象が発現するときも高分子様の会合体が形成されるが,三次元ネットワーク構造を形成しない。この三次元ネットワーク構造形成の欠如が増粘という珍しい現象を惹き起こす原因である。トリス(3,7- ジメチルオクチル)-1,3,5- ベンゼントリカルボキサミドはヘキサンに対し際立った増粘作用を示す。また,トリス(3,7- ジメチルオクチル)-cis-1,3,5- シクロヘキサントリカルボキサミドは四塩化炭素,シクロヘキサン,ベンゼン,ピリジンに対し増粘化を起こす。5- アミノイソフタル酸ジメチルから合成した1- オクタデシルアミノ-3,5- ビス(2- エチルヘキシルアミノカルボニル)ベンゼンはヘキサン,シクロヘキサン,芳香族溶媒,メタクリル酸メチル,スチレン,軽油に対し増粘化を起こす。また,トランス-1,2- ジアミノシクロヘキサン誘導体,アミノ酸誘導体,環状ジペプチド誘導体のゲル化剤を紹介した。trans-1,2- ビス(ウンデシルカルボニルアミノ)シクロヘキサンは多くの溶媒をゲル化できる優れたゲル化剤であり,自己組織化した左巻きのらせん構造体を形成する。N- ベンジロキシカルボニル-L- イソロイシンやL- バリンのオクタデシルアミドもまた優れたゲル化剤であり,熱可逆的ゲルを形成する。人工甘味料から合成したシクロ(L- アスパラギニル-L- フェニルアラニル)誘導体もまたよいゲル化剤である。ヒドロキシヘキシルセグメントを含んだシクロ(L- アスパラギニル-L- フェニルアラニル)はチキソトロピー挙動を示すヒドロゲルを形成する。また,オリゴジメチルシロキサンセグメントを含む誘導体はチキソトロピー挙動を示すオルガノゲルを形成する。
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