抄録
塗布プロセスによる有機TFT(薄膜トランジスタ)作製は,現在,最も注目されている技術課題の一つである。 有機TFT の塗布型ゲート絶縁材料として機能するポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)について,著者らの最近の研究成果を中心に紹介したい。PMSQ 薄膜の電気特性は,ゾルゲル反応による合成条件に大きく影響を受ける。例えば,ギ酸触媒を用いてトルエン中で合成したPMSQ は,150℃の熱処理後,1014Ωcm 以上の高絶縁性を示しており,残存シラノール基が少ないことを確認している。また,イオン性不純物によって誘導されるリーク電流が,PMSQ では非常に小さく,ゲート絶縁材料にとって有利な特徴である。ポリ(3- ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いたトップコンタクト型TFT において,ゲート絶縁膜として一般的な熱酸化シリカ膜と比較したところ,PMSQ ゲート絶縁膜はそれらとほぼ同等のトランジスタ特性を示した。プラスチック基板上への有機TFT 作製も達成しており,PMSQ は塗布型ゲート絶縁材料として展開できることを見いだしている。 また,PMSQ の変性によって,表面疎水化,低電圧駆動を可能にする高誘電率化やフォトリソグラフィ可能な光硬化性などの機能付与をすることにも成功した。