抄録
シルセスキオキサンキューブをナノビルディングブロックとした新規有機無機ハイブリッド材料の特徴である透明性,耐光性を損なうことなく,短所である熱時靭性不足を改善する方法について検討した。テトラキス(シクロヘキセニルエチルジメチルシロキシ)テトラキス(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサンを用いたハイブリッド材料では,熱時低靭性の主要因がビニル官能基の転位による反応性の低下に起因する架橋反応密度の低下であることを明らかにした。転位が起こりにくい官能基を量子計算シミュレーションを用いて予測した。転位が起こりにくいビニル基を有するテトラキス(ジシクロペンタジエニルジメチルシロキシ)テトラキス(ジメチル シロキシ)シルセスキオキサンをビルディングブロックとした硬化系では,架橋反応率の向上,および熱時靭性が改善されることを実証し,当該ハイブリッドの成形性の改善,ひいては光学用途への展開の可能性を拡大することができた。