抄録
熱硬化性樹脂は一般にアモルファス構造でありフォノン散乱が大きく低い熱伝導率を示す。熱伝導率を高めるためにはフォノン散乱の抑制が必須であり,樹脂内部の秩序性や,フォノン伝導に関与する共有結合密度(架橋密度)の向上が有効である。そこで,本報告では熱硬化性樹脂の熱伝導率を支配する固体の熱の三定数(熱拡散率,定圧比熱,比重)を明らかにし,秩序構造および架橋密度の効果を調べた。三種類の熱硬化性樹脂を用いて,三定数と熱伝導率の関係をプロットしたところ,樹脂の種類によらず熱拡散率と熱伝導率に良好な相関が見られ,熱拡散率が支配的であることが分かった。次に,エポキシ樹脂において,メソゲン骨格による秩序構造形成および架橋密度と熱伝導率の相関を確認した結果,汎用樹脂で架橋密度を高めると熱伝導率が増大する良好な相関が得られた。一方,同じ架橋密度ではメソゲン骨格を導入した方が熱伝導率は1.5 ~4 倍高く,秩序構造のドメイン比率が大きいほど高くなった。この熱伝導率には汎用樹脂では,架橋密度を高めてもこのような高い熱伝導率の値には到達できず,秩序構造の形成による熱伝導率向上効果の方がはるかに大きいことを明らかにした。