抄録
空気などの異種媒体と接触する高分子表面の構造および物性は,濡れ性,摩擦特性,接着性,生体適合性など,さまざまな表面機能特性の発現と密接に関連している。したがって,高度に機能化された高分子表面を創製するためには,その構造と物性を正確に理解し,精密に制御する必要がある。高分子表面は材料内部と比較して極めて異なったエネルギー状態にあり,その構造と物性はバルクと著しく異なっていることが,コンピューター・シミュレーションや分析技術の発展とともに明らかにされつつある。しかしながら,これまでの材料設計においては表面構造のみしか考慮されておらず,物性,特にレオロジー特性の制御に関してはほとんど検討されていない。ここでは,走査フォース顕微鏡(SFM)1)を用いた高分子表面の分子運動特性解析を中心に解説する。