抄録
アルキルボラン開始剤は,酸素雰囲気下でラジカル開裂が生じ,かつドーマント種を伴ってリビング的にラジカル重合が進行する。本稿では,アルキルボラン開始剤のドーマント形成に着目し,樹脂硬化物の修復機能の付与および修復挙動について検討した。樹脂硬化物を破断後,モノマーを塗布した破断面同士を密着させて加熱処理ところ,破断面同士の再接着(修復)が生じた。これは,破断面に存在するアルキルボラン由来のドーマント種と,破断表面に拡散したモノマーとの反応(再重合)により起こったものと考えられる。また,修復処理後の樹脂硬化物は,修復前と同等の引張り強度,熱特性を示し,樹脂硬化物としての性能も同様に修復した。熱硬化性樹脂の修復機能付与により,樹脂硬化物の長寿命化,新しい材料設計につながる研究として,広範な分野での応用が期待される。