抄録
火災リスクの低減のため,高分子材料には難燃性が求められている。エポキシ樹脂においても難燃性が求められており,一般にテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)が難燃剤として使用されている。しかし,ハロゲンを含む難燃剤の使用は焼却時にハロゲン化ダイオキシンが発生する懸念があるため,TBBPA を代替できるハロゲンフリー難燃剤が求められている。ハロゲンフリー難燃剤として金属水酸化物や窒素含有化合物などが研究されているが,中でも,リン含有化合物は最も盛んに研究がおこなわれており,実際に難燃剤として工業的にも利用されている。本稿では,エポキシ樹脂で使用されている難燃剤の中でも特にリン系難燃剤に着目し,市販されている難燃剤から最近の研究例,リン系難燃剤による難燃化の機構に関する知見を解説する。