ネットワークポリマー
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高分子材料の自由体積と陽電子消滅
鈴木 健訓
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1998 年 19 巻 3 号 p. 156-166

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抄録
陽電子消滅寿命測定法 (PALS) は高分子材料の新解析手法として注目されるようになった。これまで, 自由体積は高分子科学において基本的な概念であり, 多くの高分子材料の特性に関連していると思われてきたが, 加速器や高度な装置を用いる必要があり, 簡単に推定できる量ではなかった。
一方, PALSを用いると簡単な装置で高分子間の空隙の大きさを推定することが可能である。陽電子を高分子に入射すると, ポジトロニウムが形成され, これが高分子間の空隙の中で消滅する際に, 空隙の大きさに相関した寿命を示す。この寿命から得られる自由体積の大きさや, また, 自由体積の温度変化から得られるガラス転移温度, 二次の相転移温度等の情報と, 既存の手法から得られる特性と併せることによって, 高分子材料の性質をより一層理解できるようになるのではないかと期待される。本解説では, エポキシ硬化物と結晶性高分子のテフロンにおける実験を例として, PALSの実験方法やそれから得られる自由体積の特徴について述べる。
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