抄録
紫外線硬化系において反応性エラストマーを用いた変性系エポキシ樹脂硬化物の調製を試み, その強靭性について検討した。末端にアミノ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体 (ATBN) を用いた場合, エポキシ樹脂の紫外線硬化反応が十分でなく, 硬化には至らなかった。これは紫外線硬化反応の開始剤から放出されるプロトンがATBNの末端基の窒素によって, トラップされたためであると考えられる。一方, このような開始剤のプロトンがトラップされるような非共有電子対をもたないメトキシシリル基を末端に有する反応性エラストマーであるジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイドを用いた場合, 紫外線によるエポキシ樹脂の硬化が可能となる事が示された。この硬化系では, エポキシ樹脂と反応性エラストマーとの相溶化剤として3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン (GPTMS) を用いた。その硬化物は連続相のエポキシ樹脂にエラストマーが相溶しながらも, 一部で分散相を形成するといった相分離構造を示し, わずかに濁ってはいるが透明であった。この紫外線硬化系においてGPTMSの添加に伴い, 硬化フィルムのガラス転移温度は低下したが, 引張試験における破壊エネルギーの大幅な増加が観察された。