2006 年 27 巻 3 号 p. 135-144
攪拌状態を制御できる攪拌装置を用い, 硬化剤の不均一な不飽和ポリエステル樹脂試験片を作製した。80℃, 30wt%の硝酸水溶液において50および250時間これらの試験片を浸せきさせた後, 曲げ強さおよび腐食深さを測定した。さらに平均値, 標準偏差および分布の形状によって腐食挙動および機構を信頼性工学的見地から検討した。ハンドミキシングで作製した試験片の曲げ強さ分布は正規分布に従い, 腐食試験後の曲げ強さ分布は形状を維持したまま劣化した。攪拌装置により作製した硬化剤が少ない注型板, 硬化剤が偏在する注型板, 硬化剤多く存在する注型板について腐食試験を行った。硬化剤が多い注型板は著しく腐食したのに対し, 硬化剤の少ない注型板の腐食は遅かった。さらに, 偏在する注型板の腐食は大きなばらつきをもって腐食した。硝酸水溶液中における不飽和ポリエステル樹脂の劣化機構は硬化剤中に残留する希釈剤が溶出することによってピットを生じるためであり, そのため曲げ強さの低下は硬化剤の濃度に依存する。不飽和ポリエステル樹脂中の硬化剤濃度が増加するにつれて, 一次硬化材の強度は増加し, 腐食深さもまた増加した。それゆえに, 機械的特性分布は腐食が進行するとともに複雑に変化した。耐食性を要求される化学装置等に不飽和ポリエステル樹脂を使用する場合, 適量の硬化剤を使用する必要がある。