神経心理学
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特集 認知と情動の神経心理学
「いま」を作り出す身体反応の受容・制御と感情
―島皮質の機能からの考察―
寺澤 悠理
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2018 年 34 巻 4 号 p. 289-298

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抄録

本稿では,神経心理学と認知神経科学が提示してきた島皮質の機能について,古典的な研究から,比較的最近のモデルまで概観する.まず,内臓感覚,嫌悪,内受容感覚,主観的感情,覚醒度といった心的過程の神経基盤としての働きに注目する.次に,機能的,解剖学的連結に基づく下位領域への分類と,それぞれに対応する多様な心的過程への関与を述べる.最後に,身体に関する脳内の予測と実際の照合領域としての役割を仮定するInteroceptive predictive coding(内受容予測とその符号化)の中枢としての島皮質について述べる.島皮質は「いま」を生み出し,それに応じた自身の意識的・無意識的な調整を可能にしており,この過程が感情において重要な側面である.

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© 2018 日本神経心理学会
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