日本文学
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特集・時を越えて伝える
古事記における「シャーマニズム」
―― 葦原中国と命名することについて ――
アンダソヴァ マラル
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2015 年 64 巻 5 号 p. 11-20

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抄録

神話を伝えていくこと。口頭で語るのか、あるいは文字で記すのか。それは神話そのものは何かという課題へと展開する。「神話」という概念は「古代」のものとして捉えられていた。それが「未開」であるという価値づけから、「古層」に価値を見いだすという「発生論」の視点へと転換する。さらに、古代において神話が神話としての意味を持つのではなく、時代とともに変化していく、変化していくことに価値があるとする「中世神話」の視座が生まれていくのである。

こうした視点を踏まえ、本稿において古事記における「シャーマニズム」の考察を試みる。「葦原中国」という言葉に注目し、それはどのような文脈において「命名」されるのかを読み解いていく。その世界の名を発すること、発する主体は誰であり、発される場面はどこなのか、また発される瞬間そのものに呪的な働きが込められていることが見えてくるのである。古事記の神々が言葉を発する、その言葉が生みだす世界を古事記が生成する「シャーマニズム」として捉える可能性が提示できるのである。

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