抄録
『和英語林集成』1版(1867)の編纂に先だって,J.C.ヘボンは,ノート一冊本499ページ分からなる「原稿」を作成していた。「原稿」は,約7,000語を収録し,うち約四分の三の語が1版に収録されている。「原稿」の見出し語や漢字表記などについて,中・近世の節用集をはじめとする諸辞書と比較照合した結果,ヘボンは森楓齋著『雅俗幼学新書』(1855)を参看し,「原稿」に採録した可能性が強いと考えるに至った。その論拠について具体例を挙げながら諸面から指摘する。なお,『雅俗幼学新書』から「原稿」に採り入れられた見出し語や漢字表記などは,修正を施されながら1版に引き継がれていった。