本稿は、未発表資料である黒川真頼の草稿「語学雑図」を紹介するものである。当該資料はおもに用言やテニヲハの活用表からなり、これによって、用言の活用研究とテニヲハ類の研究が連動して行われていたことなど、真頼の構想過程をうかがい知ることができる。また本稿では、術語「終止言」の使用と、「良行四段一格」の配置を手がかりにして、当該資料の成立時期が明治四年頃までであると推定した。こうしたことから、文部省編輯寮『語彙別記』『語彙活語指掌』の編纂に際して、真頼の文法学説が重要な位置を占めていたことが示唆された。