日本語の研究
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日本語を上層とする宜蘭クレオールの人称代名詞
簡 月真
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2018 年 14 巻 4 号 p. 31-47

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抄録

本稿では,台湾で使われている宜蘭クレオールの人称代名詞について,東岳村で得たデータをもとに,体系を記述し,その変化のプロセスを明らかにした。宜蘭クレオールの人称代名詞は基本的に上層言語の日本語の形式に由来するが,その多くはくだけた形式由来であり,植民地の社会的構造を反映していることが推測される。数の区別はあるが,自立形式と拘束形式の区別や格,スタイルによる区別はない。一人称に包括的複数と除外的複数の区別があり,それは基層言語のアタヤル語の用法を受け継いていると考えられる。また,一人称単数形の属格および与格には傍層言語の閩南語の形式が取り込まれていること,接尾辞-taciが複数マーカーとして規則的に用いられていること,短縮形が多くみられることが指摘できる。なお,世代間の変異から,人称代名詞の変化のプロセスを突き止めることができた。

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© 2018 日本語学会
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