南琉球石垣市宮良方言のujoohuNは共通語の「差し上げる」に相当する。しかし共通語と異なり一人称寄り視点や人称制約がなく,敬語上のⅠ人称がない。補語を高く位置づける謙譲語の機能を持つが,上位者主語の場合,主語を軽度に高める「主語恭敬機能」も持ち,「上位者主語=上位者補語」で使用できる。また「授与方向優先の機能」を持ち,補語が話し手より下位者でも「主語<補語」で使用できる。一人称の位置は序列の中で固定されるため「下位者主語,上位者補語」で一人称(複数)補語が許容される時がある。また尊敬語ooruN(なさる)を下接した二方面敬語ujooh-ooruN(謙譲語+尊敬語)が上位者主語で用いられ,「主語≦補語」「主語>補語」で使用可能だが「主語>補語」では主語を補語より高く位置づける。「上位者主語,下位者補語」で一人称(複数)補語が許容される時がある。上位者へ優先的に敬語を用いる「上位者優先のルール」があるためである。