本稿では近世以降に起こった疑問文の歴史変化について論じる。中世末においては、疑問詞疑問文と肯否疑問文が、文末のカの有無によって区別され、疑問詞疑問文に文末カが用いられることはほとんどなかったが、現代共通語では自問の文脈においてカを使うことに不自然さはない。この変化を調べるため、『日本語歴史コーパス』から疑問詞疑問文の用例を抽出し、カの出現率の推移を見たところ、S字曲線を描きながら1700~1900年にかけて大きく上昇していくのが分かる。文末カは疑問詞疑問文に用いられるようになる最初から自問に偏り、また同じ時期に疑問詞を持つ間接疑問節もカによって標示されるようになることから、この時期にカに〈問いかけ性〉を失う変化が起き、これによって、カが疑問詞疑問文と肯否疑問文を区別せず用いられるようになったと考えられる。