日本近代文学
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論文
新劇の唯美主義
──築地座と久保田万太郎「釣堀にて」を中心に──
福井 拓也
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2020 年 103 巻 p. 32-45

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抄録

昭和三年一二月二五日の小山内薫の急逝、それに続く築地小劇場の分裂後、新劇界は左翼演劇とその他──〝前衛派〟と〝芸術派〟とに二分されることになった。しかし唯美主義的と理解されてきた〝芸術派〟が、実際に何を目指してきたのかについては、これまで問われてこなかった。本稿はその課題に応じるものである。

具体的には築地座と久保田万太郎との関わりに注目し、第二十七回公演でとりあげられた戯曲「釣堀にて」の表現世界を細かに分析した。そして「釣堀にて」の特異なありように、役者や戯曲といった演劇を構成する諸要素の相互的な検討を通じて、個々に新たな表現を、そして演劇の可能性を探究した点にこそ、当時の〝芸術派〟の実相が理解されるのだと結論づけた。

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