日本近代文学
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論文
三島由紀夫「弱法師」における「盲目」への配置と抵抗
――トラウマ的な視覚経験の語り――
秋吉 大輔
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2017 年 96 巻 p. 78-92

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抄録

三島由紀夫「弱法師」(一九六〇)は、これまで「盲目」と晴眼者の世界を二項対立で捉えることで、三島の述べる「形而上学的主題」(「あとがき」『近代能楽集』新潮社、一九五六年四月)を明らかにすることに焦点が絞られてきた。本論では家庭裁判所や戦災孤児としての俊徳を分析することで、個人的な視覚経験がどのような形で「盲目」として表象されるのか、その権力編成のあり方を明らかにする。家庭裁判所での発話が近代的な家族を前提にしていることを明らかにし、家族の物語という了解枠組みに沿わない俊徳のトラウマ的な視覚経験の語りが、家族の権力編制の中で「子ども」「狂人」「盲者」として配置され抑圧されていくさまを明らかにした。

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