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山本 弥生, 桑尾 麻記, 武田 美作, 窪 好美, 末廣 史恵, 末廣 正
2010 年25 巻1 号 p.
32-37
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:現在の特定保健指導の対象者は,まず腹囲とBMIの基準で選定されるため,肥満からはずれた非肥満者においては,それらが保有する他の心血管因子のリスクが十分に反映しきれていない.今回,特定保健指導を有効に進めていくために,肥満と代謝異常の実態を腹囲を中心に解析した.
対象と方法:平成20年度(平成20年4月~平成21年3月)人間ドック受診者で,男性7,136名および女性6,548名の計13,684名の各個人データのうちメタボリックシンドローム(MetS)および特定健診の基準となる,BMI,腹囲,血圧,血糖値,HbA1c値,血清脂質値(トリグリセリド,HDLコレステロール)を用いて解析した.
結果:男性の肥満の頻度が47.4%と女性20.7%に比し高頻度であった.さらに,腹囲とMetSの構成因子数は男女とも強い関係を示し,およそ腹囲3.5cm増加で1因子増えた.しかし,MetSの構成因子を3つ保有していても,男性31.5%,女性64.4%が支援の対象となる肥満から外れていた.
結論:心血管疾患の危険因子を減らすために,肥満,特に内臓脂肪過剰の予防の重要性を改めて確認した.しかし,特定保健指導における支援対象から,非肥満者の重複因子保有者の多くが見逃されていることが明らかになった.
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小野 鉄也, 前田 麻美, 阿部 昌史, 柴田 昌, 城間 勉, 大坪 哲雄, 河合 隆
2010 年25 巻1 号 p.
38-43
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:早期食道がんの発見には,微細な粘膜癌の描出が必要で,各施設,撮影方法に様々な工夫をしていると思われる.当施設では顎を上げ,造影剤・空気を同時に飲用する方法(以下,開口法)を以前行っていたが,誤嚥する受診者がたびたび見られた.現在は通常に飲用し,タイミングよく撮影する方法(以下,非開口法)を行っている.そこで,開口法・非開口法の画像評価の比較検討を行った.
対象と方法:開口法・非開口法をともに施行した同一症例573例を対象とした.造影剤付着能・粘膜描出能・気泡形成の有無(各々上部・下部)・噴門描出能の評価を3段階で行いスコア化した.合計21点を満点とし,総合評価:良:21~17点,可:16~12点,不可:11~7点の3段階に分け総合評価を行った.
結果:粘膜描出能では食道下部で不可と判定された例は開口法17例(3.0%)・非開口法5例(0.9%)と非開口法が有意に低かった.気泡形成の有無で良と判定されたのが,開口法165例(28.8%)・非開口法212例(37.0%)と非開口法が有意に高かった.総合評価で良と判定された例は開口法277例(48.3%)・非開口法316例(55.2%)と非開口法が画像評価に優れていた.
結論:従来,開口法は粘膜描出能向上の手技のひとつとして認識していたが,今回の結果から非開口法が画像評価に優れていると評価された.
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髙島 周志, 竹中 博美, 泉 由紀子, 齋藤 伸一, 住谷 哲, 中村 秀次, 佐藤 文三
2010 年25 巻1 号 p.
44-49
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:非アルコール性脂肪性肝障害(Nonalcoholic Fatty Liver Disease:以下,NAFLD)の患者の多くでインスリン抵抗性を示すことが報告されてきている.しかし,インスリン抵抗性がNAFLDの原因なのか結果なのか,脂質代謝に如何に関与するのか,抵抗性がインスリン作用発現機構のどのステップで生じているのか等は不明な点が多い.今回我々は人間ドック受診者を対象に,NAFLDにおけるインスリン抵抗性が生じる機構について検討した.
方法:当センターを2008年に受診した3,698名の中で,アルコール飲酒の習慣がなく,糖および脂質に関する薬を服用していない男性521名,女性575名を対象とした.インスリン抵抗性の指標としては,糖代謝関係のHOMA-Rと,脂質関係のTG/HDL-Cを用いた.脂肪肝の有無は腹部超音波検査で判定した.
結果:HOMA-R値上昇とともに脂肪肝の発生頻度も上昇した.一方TG/HDL-C値上昇とともに脂肪肝の発生頻度も増加し,ROC解析でTG/HDL-C値はHOMA-Rと同等の脂肪肝検出能を持っていた.
結論:NAFLDの発生頻度はHOMA-R値上昇につれ増加し,インスリン抵抗性はNAFLDの病態に関与することが示唆された.また,インスリン抵抗性はレセプター以降の,糖質制御経路と脂質制御経路の分岐以降で生じていると考えられた.
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荒瀬 康司, 辻 裕之, 大本 由樹, 謝 勲東, 天川 和久, 加藤 久人, 有元 佐多雄, 岩男 暁子, 橋本 光代, 宮川 めぐみ, ...
2010 年25 巻1 号 p.
50-54
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:健診の目的のひとつは悪性腫瘍の早期発見である.健診で発見された悪性腫瘍が,自覚症状を呈した後診断された悪性腫瘍に比しどの程度生存率が良いのかは不明確な点も多い.そこで健診で発見された原発性肝癌と自覚症状を呈し受診した原発性肝癌の臨床背景の違い・予後の違いを明らかにすることを目的に本研究を行った.
方法:当院にて人間ドック健診あるいは肝臓外来での定期健診にて発見された原発性肝癌167例(定期健診群)と腹痛・腹部不快感・食欲不振等を主訴に受診した87例(自覚症状群)につき,臨床的特徴・予後をretrospective cohort studyにて検討した.肝がんのステージは,1)最大径2cm以下,2)単発,3)脈管浸潤なしの3項目により判定した.すなわち,3項目がすべて満足された場合をステージ1,2項目が満足された場合をステージ2,1項目が満足された場合をステージ3,すべて満足されなかった場合をステージ4とした.臨床的特徴はMann-Whitney試験にて検討し,生存率はKaplan-Meier法にて比較した.
結果:1. 各群での臨床的特徴:定期健診群は男性126例,女性41例,年齢の中央値65(18~81)歳,アルブミン3.6(2.4~5.1)g/dL,総ビリルビン値1.0(0.3~3.3)mg/dL,血小板 9.7 (1.9~49.0)×10
4/μL,AFP26(1~739)ng/mLであり,原発性肝癌のステージ(1/2/3/4)はそれぞれ84,57,21,8例であった.一方,自覚症状群は男性36例,女性51例,年齢の中央値62(38~77)歳,アルブミン3.4(2.4~5.0)g/dL,総ビリルビン値1.1(0.3~18.0)mg/dL,血小板 9.1(3.1~33.6)×10
4/μL,アルファフェトプロテイン(AFP)33(2~47,000)ng/mLであり,HCCのステージ(1/2/3/4)はそれぞれ5,11,51,20例であった.自覚症状群では肝がん進行例,肝機能悪化例,女性が多くみられた.2. 各群での予後:定期健診群での累積生存率は,1年94.6%,3年76.2%,5年64.8%であり,一方自覚症状群での累積生存率は,1年60.2%,3年31.5%,5年14.4%であった(
p<0.001).
結論:原発性肝癌にて長期生存を得るためには定期健診により無症状時期に肝がんを発見することが肝要であった.
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天川 和久, 荒瀬 康司, 辻 裕之, 謝 勲東, 鈴木 規之, 橋本 光代, 大本 由樹, 加藤 久人, 原 茂子
2010 年25 巻1 号 p.
55-59
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:近年,本邦では慢性閉塞性肺疾患患者が増加しているが,その閉塞性肺障害出現の経過についての詳細はまだ明らかではない.今回我々は10年に亘る人間ドック継続受診者の1秒量の変化および各要因との関連を検討した.
方法:当センターの人間ドックを1997年から10年連続継続受診した1,336例を対象とした.全体の10年での1秒量の変化量(L)の平均を求めた.次に変化量と性別・1997年時の年齢・BMI・喫煙歴・1997年時の1秒量との相関を検討した.統計はノンパラメトリック解析を行い,
p<0.05を有意とした.
結果:全体の1秒量の変化量は-0.38であった.性別では男性-0.40,女性-0.32となり,男性で有意に低下量が大であった(
p=0.002).年齢では45歳未満-0.39,45歳以上55歳未満-0.39,55歳以上-0.36となり,55歳以上で有意に低下量が小であった.BMIでは20未満-0.36,20以上25未満-0.39,25以上-0.36となり,20以上25未満で低下量が有意に大であった(
p<0.001).喫煙歴では非喫煙者-0.37,過去喫煙者-0.39,喫煙継続者-0.41となり,喫煙継続者で低下量が有意に大であった(
p=0.041).1秒量では3.0未満-0.33,3.0以上3.5未満-0.39,3.5以上-0.46で,1秒量が大きいほど有意に低下量が大であった(
p<0.001).
結論:当人間ドック受診者の10年に亘る1秒量変化の検討では喫煙継続例での1秒量低下が大きく,禁煙の重要性が示唆された.
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中津川 克子, 真庭 淳子, 鈴木 寿美子, 榎本 秀樹, 五島 知郎, 市村 茂, 浅尾 高行
2010 年25 巻1 号 p.
60-64
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:Gastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)は消化管に発生する粘膜下腫瘍である.今回,上部消化管造影検査では指摘されず腹部超音波検査(以下,US)を契機に発見された十二指腸GISTの一例を経験したので報告する.
症例:46歳男性.USにて胆嚢体部背側,膵頭部近傍に3cm大の類円形で境界明瞭な十二指腸由来の腫瘤を認めた.腫瘤の内部は斑状の高エコー域を伴う肝実質と等エコーの腫瘤で,カラードプラでは辺縁にわずかな血流を認めた.CT,MRIで腫瘤は十二指腸下行脚に存在し,造影CTで腫瘤は不均一に造影され,MRI T1強調画像で軽度の低信号,Dynamic studyの早期相で不均一に濃染された.十二指腸部分切除術が施行され,病理組織学的に低リスクの十二指腸GISTと診断された.
結論:本症例は十二指腸から管外性に発育した腫瘤で,上部消化管造影検査は指摘されなかったが,USでは十二指腸から管外性に発育したことで,消化管ガスの影響を受けることなく容易に描出されたものと思われる.USはリアルタイムに腫瘤の発生部位を同定することができ粘膜下腫瘍の発見にも有用である.
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村尾 敏, 岡 翼, 長町 展江, 本多 完次, 荒川 裕佳子, 森 由弘, 厚井 文一
2010 年25 巻1 号 p.
65-70
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:日本人のLDL-コレステロール/HDL-コレステロール(L/H)比の分布と動脈硬化危険因子との関連を検討する.
方法:対象は2004年に当院人間ドックを受診した3,717名.これらから,検討1):糖尿病・高血圧・高脂血症の治療を受けていていないもの,検討2):body mass index(BMI),血圧,種々の代謝因子がすべて2008年人間ドック学会ガイドラインの基準内のもの,検討3):検討1対象者のなかでLDL-コレステロールが139mg/dL以下であるもの,を抽出しL/H比と他の動脈硬化危険因子を検討.
結果:L/H比は検討1,検討2,検討3でそれぞれ2.24±0.88,1.46±0.42,1.90±0.67でありすべての群で性差(男性が高値)を認めた.検討2対象者のL/H比の90パーセンタイル値は2.02(男性2.25,女性1.77)であった.LDL値が比較的低値の集団(検討2,3)ではL/H比はLDL値よりHDL値に大きな影響を受けていた.LDL値が139mg/dL以下であってもL/H比が高値のものは低値のものより高感度CRP値が高値であった.
結論:BMI,血圧,種々の代謝因子がすべて人間ドック学会ガイドライン基準内にある者のL/H比の90パーセンタイル値は2.02であった.LDL値が低値でもL/H比高値のものはL/H比低値のものより動脈硬化の危険因子が高度である可能性がある.
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田村 陽子, 西尾 友絵, 沖本 由紀子, 村上 幸江, 田中 麻衣子, 藤谷 恭子, 戸田 まみ子, 千森 真理, 宮本 裕二
2010 年25 巻1 号 p.
71-76
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:メタボリックシンドロームに着目した継続的な保健指導の効果を,体重変化から明らかにする.
方法:平成16年4月から平成21年3月まで,当センター2日ドックを受診した40歳から69歳までの5年間継続受診者233名を対象とし,平成16年度から平成18年度(以下第1期とする)と,平成18年度から平成20年度(以下第2期とする)の体重増減者数と,体重変化平均値について比較した(第1期は16年度と18年度の体重,第2期は18年度と20年度の体重を評価に用いた).第1期における関わりは,医師からの検査結果説明後に,異常検査データについて約10分間の保健指導を行った.第2期は,腹囲測定と体組成検査を加え,メタボリックシンドロームの健康教室と健康目標の設定を行った.
結果:第1期の体重増加者数は3kg以上が24名,1kg以上3kg未満が53名,体重減少者数は3kg以上が26名,1kg以上3kg未満が41名,変化なしが89名であった.第2期の体重増加者数は3kg以上が14名,1kg以上3kg未満が23名,体重減少者数は3kg以上53名,1kg以上3kg未満が61名,変化なし82名であった.第1期に比べ,第2期は体重減少者数が有意に増加し,体重増加者が減少していた(
p<0.001).体重変化平均値は第1期が,0.11kg増加,第2期は1.25kg減少であった.体重変化平均値も第2期の方が有意に減少していた(
p<0.001).
結語:メタボリックシンドロームに着目した継続的な保健指導は体重減少に有効であった.
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笠松 亜希, 奥山 恵, 小山 由香里, 岡部 恵美子, 原口 千鶴, 山崎 大輔, 北堀 浩也, 斉藤 義典, 津久江 美紀, 円岡 寿
2010 年25 巻1 号 p.
77-83
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:平成20年度より実施された特定保健指導では,内臓脂肪型肥満とその要因となる生活習慣を改善する指導が要求されている.しかし,行動目標を実行可能な範囲で設定すると,体重や腹囲の大幅な減少が見込めないケースも少なくない.そこで,体重3kgと腹囲3cmの減少により,検査データの変化がみられるのかを明らかにすることにした.
方法:人間ドックを受診したN健康保険組合員のうち,「積極的支援」に該当した男女82名に特定保健指導を実施し,実績評価では特定健診と同等の血液検査を実施した.そのうち平成21年3月31日までに実績評価が終了した47名を対象に,体重3kg,腹囲3cmを減少の目標値とし,体重・腹囲ともに目標を達成した群,腹囲のみ目標を達成した群,体重のみ目標を達成した群,体重・腹囲ともに目標を達成しなかった群の4群に分け,指導前後の血液データを比較検討した.
結果:体重のみ達成群は対象者が1名であったため,検討から除外した.達成群では中性脂肪,ALT,γ-GTPが,腹囲のみ達成群ではALTが有意に低下した.非達成群では収縮期血圧が有意に上昇した.達成群では他群と比較して,血圧,中性脂肪,HDL-コレステロール,ALT,γ-GTPにおいて好転者の割合が高かった.
結論:腹囲3cmに加えて体重3kgの減少は,検査データの低下に有効であることが示唆された.
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玉腰 暁子, 中沢 あけみ, 西垣 良夫, 津下 一代
2010 年25 巻1 号 p.
84-89
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:特定保健指導プログラムでは,受診者自らが行動変容の方向性を導き出せるような支援が求められているが,現状ではこのような保健指導による生活習慣と検査値の改善効果は明らかではない.高尿酸血症は肥満,高血圧,糖・脂質代謝異常などの合併も高い疾患であり,軽度異常者に対する第一選択は,生活指導とされている.そこで,セルフケアに重点をおいた保健指導への参加有無による軽度尿酸値異常者の生活習慣ならびに検査値の変化につき検討した.
方法:某事業所職員で2000~2007年に健康診査を受けた者のうち,高尿酸血症により要生活指導(合併症なしの場合は尿酸値7.0~8.9mg/dL,ありの場合は7.0~7.9 mg/dL)となったものを対象とし,保健指導の参加有無別に1年後の生活習慣,検査結果を比較した.
結果:検査結果が得られた男性272名のうち,保健指導を受けたものは91名であった.1年後に尿酸が正常値化したものは118名で,その割合は参加群に有意に高かった.尿酸値は参加群,非参加群とも低下したが,その程度は参加群に有意に大きかった.喫煙,運動習慣の改善率には両群で差を認めなかったが,毎日飲酒者は参加群で減少し,γ-GTPの増加傾向は参加群で小さかった.
結論:今回の解析から,対象とした事業所で行われてきたセルフケアに重点をおいた保健指導は高尿酸血症の改善に有用であることが示唆された.
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永島 かおり, 阿部 慶子, 足立 雅樹, 清水 正雄
2010 年25 巻1 号 p.
90-94
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:近年乳がん罹患者数の増加から乳がん検診への関心が高まり,乳腺超音波検査受診者数も年々増加している.それに伴い二次検査対象者数も増加している.当センターにおける二次検査判定基準の再評価をするために,超音波所見について検討した.
方法:対象は2005年6月から2009年3月末までに乳腺超音波検査を受診した3,952名.画像評価は一次・二次ともに検査実施技師によるコメントと専門医2名の同意にて評価した.二次検査症例について,一次検査と二次検査の画像・所見を対比し検討した.
結果:乳腺超音波検査を受診された3,952名中,C2判定は341名(8.6%)であった.当センターにて二次検査を施行した方は122名.所見の内訳は,線維腺腫96名,乳管内乳頭腫14名,低エコー腫瘤疑い9名,低エコー域疑い1名,嚢胞1名,乳腺症1名であった.二次検査後に判定が変わらなかった方は106名,判定が軽くなった方は10名,判定が重くなった方は6名であった.
結論:二次検査対象者のほとんどが線維腺腫であり,大きさや形状の変化を認めなかった.このことから二次検査の判定基準を見直し,典型的な線維腺腫などを除外していくことが検査精度の向上につながり,受診者の精神的不安・医療費負担も軽減すると考えられた.引き続き二次検査症例を検討することでさらに検査精度が向上すると考えられる.
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林 智之, 荻野 英朗, 舩木 雅也, 西川 昌志, 平井 聡, 島谷 明義, 堀田 洋介, 松田 耕一郎, 平松 活志, 松田 充, 野田 ...
2010 年25 巻1 号 p.
95-99
発行日: 2010年
公開日: 2013/02/28
ジャーナル
フリー
目的:人間ドックで全大腸内視鏡検査(以下TCF)をどのような受診者に勧奨すべきかを明らかにする.
方法:2003年から2007年までの当院人間ドック受診者3,055例中TCFを選択した304例を対象とした.大腸がんと大腸ポリープを含む大腸腫瘍の発見率に関して便潜血検査とTCFで比較し,また大腸腫瘍を有する症例の臨床的指標と危険因子について検討した.臨床的指標として,年齢,家族歴,既往歴,喫煙歴,飲酒歴に加えて高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症,BMIについて大腸腫瘍との関連性を多重ロジスティック回帰分析による多変量解析を用いて検討した.
成績:便潜血検査によって大腸がんは4例中2例(進行がん1例含む)に陽性であったが,早期がん2例は陰性であった.また,臨床的指標については,大腸腫瘍の既往歴と飲酒歴のみが独立した危険因子として抽出された.また,肥満,高血圧,脂質異常症,高尿酸血症,家族歴,50歳以上,喫煙などの生活習慣病の構成因子を複数有する症例において有意に大腸腫瘍の有病率が高かった.
結論:大腸がんや大腸ポリープの既往がある者,飲酒歴を有する者に加えてメタボリックシンドロームの構成因子である肥満,高血圧,脂質異常症と家族歴,高尿酸血症,年齢(50歳以上),喫煙の中から2個の因子を有する者に関しては,人間ドックにおいてTCFによる大腸腫瘍のスクリーニングを行うことを勧めてよいものと考えられた.
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