抄録
目的:喫煙と飲酒が尿酸性化および腎機能低下をもたらすかどうかについて検討した.
対象と方法:対象は人間ドックを受診した50歳代と60歳代の男性のうち喫煙歴10年以上かつ1日喫煙本数10本以上の喫煙者78名と,これまで喫煙習慣のない非喫煙者79名である.メタボリックシンドローム(MetS)の解析はウエスト周囲長85cm以上かつMetS診断項目の1項目以上有する者(MetS+1)で行った.
結果:喫煙者は,飲酒とMetS+1による補正後も非喫煙者より有意に尿酸値高値,尿pH低値を示した.酸性尿の程度をpH6で分けた場合,喫煙者でのみpH6未満における推定糸球体濾過量(eGFR)は有意に低かった.しかしMetS関連検査項目の有意差はなかった.喫煙の有無にかかわらず尿酸と飲酒量は正の相関を示したが,相関は喫煙者でより強く,飲酒量と尿pHの有意の相関は喫煙者でのみ認められた.喫煙,飲酒,MetS+1の有無は単独ではeGFRに差はなかったが,喫煙と飲酒の合併で尿pH低下の程度は強くなり,eGFRも有意な低下を示し,多量飲酒ではさらに低下した.MetS+1と喫煙と飲酒のすべてを有する者の尿pHが最も低く,尿酸は最大値,eGFRは最低値で,いずれも非喫煙かつ非MetS+1かつ非飲酒者との間に有意差を認めた.
結論:喫煙はMetS+1の有無に関係なく飲酒との併存で有意な尿酸性化を来し,喫煙が腎機能低下に関与する可能性が示唆された.