人間ドック (Ningen Dock)
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28 巻, 3 号
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巻頭言
総説
原著
  • 川原 奈津子, 吉村 理江, 渡邉 良二, 森 寿治, 山崎 昌典, 船越 健彦, 高林 弓子, 渋谷 克彦, 吉本 雅彦, 橋本 俊彦, ...
    2013 年28 巻3 号 p. 500-506
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:乳がん検診において超音波(以下,US)画像診断技術の向上により非浸潤性乳管癌(以下,DCIS)の検出率が高くなってきている.石灰化像を呈するDCISはマンモグラフィ(以下,MMG)で検出されているが,石灰化を認めないDCISはMMGでの検出が困難である.今回検診USで検出されたDCISのUS像,および当施設関連病院で精査され,追跡可能であったDCISのUS像について検討したので報告する.
    方法:2005年1月から2010年12月までにMMG+US併用検診で発見されたDCISは49例で,そのうち検診USで検出可能であった29例のUS像を検討した.さらに検診US非検出症例のうち,精査の追跡調査が可能であった19例について,精査US超音波像を検討した.
    結果:DCISにおける検診US検出症例の65.5%が充実性腫瘤であった.充実性腫瘤を呈する病変は,平均径10.0mmと比較的小さく,形状は分葉もしくは楕円,境界明瞭平滑が多くみられた.非腫瘤性病変として検出されたものは,全例低エコー域であった.検診US非検出例の腫瘤と低エコー域は丹念に観察することで検出可能であった.
    結論:DCISの超音波像は腫瘤像が比較的多く,境界明瞭平滑な小腫瘤であった.非腫瘤性病変は低エコー域のみであったが,見落とさないために,参考所見を加味して拾い上げる必要があると思われた.
  • 岩﨑 二郎, 福岡 俊彦, 高橋 恵理
    2013 年28 巻3 号 p. 507-515
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:NT-proBNP(N-terminal pro-brain natriuretic peptide)は,心不全の診断,治療効果の判定,予後の指標に役立つ心筋マーカーとして臨床上の有用性は確立しているが,健診における有用性についてはいまだ不明である.当センターでは人間ドックのオプション検査としてNT-proBNPを導入し,検討した.
    方法:NT-proBNP検査は2011年8月より実施したが,2012年10月までに599名(男性362名,女性237名)が検査を選択した.これら受診者につき,年齢,性別,血圧,血液データ,心電図判定区分,所見,心胸郭比につき,NT-proBNP値との関係を検討した.
    結果:心疾患疑いとされるNT-proBNP≧125pg/mLは,男性8.8%,女性9.7%だった.NT-proBNP値は年齢とともに高値を示すが,男女間で相違がみられた.NT-proBNP値は,血清クレアチニン値と有意な正の相関,アルブミン値,Hb,LDLコレステロール値と有意な負の相関を示した.アルブミン値,Hb値は心筋へのストレスを反映していると考えられるので,心筋へのストレスがNT-proBNP値を上昇させると考えられた.心電図所見についても,左室肥大,不整脈があれば,NT-proBNP値は上昇すると考えられるが有意ではなかった.
    結論:NT-proBNP値は,心筋のストレス状態を反映して変動する.人間ドックにおいて,心電図,胸部レントゲンを心機能検査と考えれば,NT-proBNP検査は,心筋へのストレス状態を反映し,心機能検査を補うものとして注目される.
  • 佐々木 温子, 西澤 美幸, 草野 美和子, 阪本 要一, 池田 義雄
    2013 年28 巻3 号 p. 516-523
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:喫煙と飲酒が尿酸性化および腎機能低下をもたらすかどうかについて検討した.
    対象と方法:対象は人間ドックを受診した50歳代と60歳代の男性のうち喫煙歴10年以上かつ1日喫煙本数10本以上の喫煙者78名と,これまで喫煙習慣のない非喫煙者79名である.メタボリックシンドローム(MetS)の解析はウエスト周囲長85cm以上かつMetS診断項目の1項目以上有する者(MetS+1)で行った.
    結果:喫煙者は,飲酒とMetS+1による補正後も非喫煙者より有意に尿酸値高値,尿pH低値を示した.酸性尿の程度をpH6で分けた場合,喫煙者でのみpH6未満における推定糸球体濾過量(eGFR)は有意に低かった.しかしMetS関連検査項目の有意差はなかった.喫煙の有無にかかわらず尿酸と飲酒量は正の相関を示したが,相関は喫煙者でより強く,飲酒量と尿pHの有意の相関は喫煙者でのみ認められた.喫煙,飲酒,MetS+1の有無は単独ではeGFRに差はなかったが,喫煙と飲酒の合併で尿pH低下の程度は強くなり,eGFRも有意な低下を示し,多量飲酒ではさらに低下した.MetS+1と喫煙と飲酒のすべてを有する者の尿pHが最も低く,尿酸は最大値,eGFRは最低値で,いずれも非喫煙かつ非MetS+1かつ非飲酒者との間に有意差を認めた.
    結論:喫煙はMetS+1の有無に関係なく飲酒との併存で有意な尿酸性化を来し,喫煙が腎機能低下に関与する可能性が示唆された.
  • 住谷 哲, 泉 由紀子, 高島 周志, 鈴木 真優美, 佐藤 文三, 中村 秀次
    2013 年28 巻3 号 p. 524-529
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:2型糖尿病およびメタボリックシンドロームなどのインスリン抵抗性を基礎とする糖代謝異常とヘモグロビン濃度との関連が報告されている.しかし,これまでにヘモグロビン濃度が直接インスリン抵抗性に影響するのか,他の因子を介してインスリン抵抗性に関するのかは明らかにされていない.特にメタボリックシンドロームの診断を規定する因子や脂肪肝の介在があるかは不明である.そこで今回我々は,人間ドック受診者において,ヘモグロビン濃度とインスリン抵抗性との相関がメタボリックシンドロームを規定する因子とは独立して関連するか否かを検討した.
    方法:当センターを2011年度に受診し,腹部エコーを施行した3,232名のうち,糖尿病,高血圧および脂質異常の治療を受けていない男性1,112名,女性1,385名の計2,497名を対象とした.脂肪肝の程度は腹部エコーを用いて評価した.インスリン抵抗性の指標としてはhomeostasis model assessment of insulin resistance(HOMA-IR)を用い,ヘモグロビン濃度と各変数との関連を検討した.
    結果:単変量解析では男女ともにヘモグロビン濃度とHOMA-IRとの間に有意な正の相関を認めた(男性:r=0.293,p<0.001,女性:r=0.175,p<0.001).HOMA-IRを従属変数に,空腹時血糖,脂肪肝の程度,腹囲,ヘモグロビン濃度,high density lipoprotein(HDL)コレステロール,中性脂肪,年齢,収縮期血圧,喫煙の有無を独立変数とした多変量解析においても,ヘモグロビン濃度は男女ともに有意な独立変数として採択された(男性:β=0.104,p<0.001,女性:β=0.052,p=0.008).
    結論:ヘモグロビン濃度は,メタボリックシンドロームの診断項目および脂肪肝とは独立してインスリン抵抗性と関連している.
  • 大塚 博紀, 大野 香, 原田 亜里沙, 菅野 壮太郎, 藤田 映輝, 杉山 迪子, 児玉 ひとみ
    2013 年28 巻3 号 p. 530-535
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:マンモグラフィ(MMG)検診における初回受診者と繰り返し受診者での乳がんの発見率や性状の違いは,さまざま報告されてきた.今回,当施設における初回受診者と繰り返し受診者での乳がんの発見率や性状の違いを調査検討し,今後の乳がん死亡率減少を目指した,人間ドック健診施設でのMMG検診における受診勧奨(検診啓発)のありかたについて明らかにすることを目的とした.
    方法:2010~2011年度に当施設において,MMG検診を受け最終診断がついた5,113名(初回受診者群847名,繰り返し受診者群4,266名)を対象とし,検診記録や診療録を調査した.
    結果:初回受診者群のがん発見数は8例,がん発見率0.94%であった.繰り返し受診者群のがん発見数は14例,がん発見率0.33%であった.初回受診者群のほうが,繰り返し受診者群に比し約2.85倍の発見率であった.病期についてはStageⅡが初回受診者群で0.47%,繰り返し受診者群で0.05%であり,初回受診者群にStageⅡを多く認めた.また,浸潤癌は初回受診者群で0.94%,繰り返し受診者群で0.23%であり,初回受診者群に浸潤癌が多い傾向を認めた.
    結論:MMG検診における初回受診者群は,繰り返し受診者群に比して,がん発見率が高く,病期がStageⅡで,浸潤癌が多い傾向を認めた.乳がん死亡率減少を目指すという点からは,非浸潤癌・早期癌を発見していくために繰り返し受診者を脱落させないよう受診勧奨(検診啓発)する必要があると考えられた.
  • 中村 保子, 末丸 大悟
    2013 年28 巻3 号 p. 536-542
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的と方法:睡眠時間が生活習慣病に及ぼす影響について,健診受診者623名を対象に,生活習慣,周囲からの支援,自己効力,医療者関与に関する200問からなる生活習慣アンケートおよび健診データから解析した.
    結果:睡眠時間と有意相関したのは38問で,これを因子分析し8因子が抽出された.周囲からの支援,食行動,運動,食事内容,自己効力,自己評価,体重増加が抽出されたが医療者関与に関わる変数からは抽出されなかった.健診検査項目では体脂肪率,糖負荷後2時間血糖値,HbA1cが有意な負相関を示した.睡眠時間と相関した38問と3検査項目を41変数として共変量に,睡眠時間を従属変数とした順序ロジスティック回帰分析を実施したところ,有意変数となったのは7変数(p=0.00~0.047)であった.短時間睡眠者では9時以降の夕食頻度が高く,朝食を食べることが少なく,間食することが多く,飲酒頻度は低いという食習慣を持ち,規則正しい生活を送ることができず,手助けしてくれる人が少ないという特徴があった.そしてHbA1cが高い傾向を認めた.HbA1c≧6.2%で睡眠6時間未満の,6時間以上に対するオッズ比は2.046であった.
    結論:回帰分析にて睡眠時間を予測する説明変数の1つにHbA1cが含まれたことは,睡眠時間と糖代謝が関連することを示している.そして短時間睡眠者は特徴ある生活習慣を示した.
  • 遠藤 芙美, 笹子 裕子, 松本 智美, 野崎 浩二, 塚田 一義, 石井 敏勤
    2013 年28 巻3 号 p. 543-548
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:当施設では二次受診向上に向け,2008年度から要治療・要精密検査と判定された受診者に勧奨案内用紙を送付している.さらに2010年度より勧奨案内システムの一部を見直した.この新システムの有効性を検討する.
    対象:2009年4月~2011年3月の間に勧奨案内送付の対象となった受診者.
    方法:旧勧奨案内システムと新勧奨案内システムの38検査項目のうち22検査項目について検査項目別に送付数,返信数,返信率を算出し比較する.新勧奨案内システムの概要:結果報告書に添付した勧奨案内用紙未返信者に対し,2ヵ月後に勧奨案内用紙を再送付する.
    結果:新勧奨案内システムでは,すべての検査項目で返信率の上昇を認めた.胸部CT検査(変化量:+22.7),乳腺X線検査(+20.1),子宮細胞診検査(+18.1)であった.生活習慣病関連検査では,糖尿病検査(+9.1),腎機能・尿酸検査(+7.6)であり,統計学的解析でも有意差が認められた.生活習慣病関連検査および婦人科関連検査での返信率の上昇は際立っていた.
    結論:1回目の勧奨案内未返信者に対し,2ヵ月後に再勧奨をすることは有効であった.健康意識の男女差も念頭に置き,適切な時期における受診勧奨を,疾患や検査に関する情報提供とともに行うことがさらなる受診率向上のための足掛かりになると考える.
  • 堤 英雄, 中野 未知子, 小林 喜美代, 青木 彰, 三上 将彦, 向坂 直哉, 藤原 祥子, 後山 尚久
    2013 年28 巻3 号 p. 549-554
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:当クリニックは開設当初より独自の要精検者フォローアップ用紙発送システムを使用し,効率的なフォローアップを目指している.このシステムの運用状況と課題について検討を行った.
    方法:2009年6月22日から2011年2月28日に当クリニックを受診した5,220人中,要精検判定を受けたもの3,313人について,要精検対象者の把握率・返信率,要精検対象者の精検受診率,検査グループごとの精検受診率の傾向について検討した.
    結果:把握率は返信率よりも2~3割高く,66.5%から82.8%を維持していた.各検査グループごとの精検受診率については検査グループによって異なり,受診率の一番高いものは内科医師診察の67.9%,一番低いもので肝炎ウイルス検査の42.0%であった.
    結論:当クリニックは開設当初より独自の要精検者フォローアップ用紙発送システムにより良好な把握率であったが,健診リピーターや当クリニック外来の精検受診者からの情報収集も貢献していたことから,今後これらのさらなる強化が必要であると考えられた.また,視覚的に異常が指摘される検査での精検受診率が高いことから,ビジュアル素材を検査結果に反映させる工夫と,医師の積極的な関与がうかがわれる報告書の作成が精検受診率向上に重要である可能性が示唆されたが,リスクの周知がしにくい疾患の受診率は低く,リスク説明をいかにやさしくするかについて今後の課題が残った.
研究報告
  • 吉益 順, 三好 恭子, 見本 真一, 菊池 美也子
    2013 年28 巻3 号 p. 555-561
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:健診における接遇改善のため,施設全体での取り組みのほかに放射線技術部が独自の方法で対策を試み,接遇向上に寄与することを目的とした.
    方法:部内で選ばれた風紀委員が接遇の月テーマ,週テーマを設定し,部内スタッフ26名全員がひと月ごとに当番制で接遇の評価担当者となった.評価担当者はテーマに沿って日常業務のなかでスタッフや健診現場を観察しながら,優秀な手本となる対応などを評価した.お互いの接遇を観察し合うなかで全体の意識と行動のレベルアップを図り,お客様の声や職員健診時のアンケートから効果を確認した.
    結果:優秀者として15名が取り上げられた.内訳としては20歳代8名中2名,30歳代4名中3名,40歳代10名中6名,50歳代4名中4名で経験年数の長いスタッフが多くを占めた.職員健診時の接遇に関するアンケート結果では,ほとんどが「良い」と「まあまあ」であった.「お客様の声」ではお褒めの言葉の割合が年々増加し,取り組みを継続した結果,平成24年はお褒めの言葉が苦情・要望を上回った.
    結論:部署独自の状況を考慮した方法で接遇改善に取り組むことにより,効果的に接遇向上がなされた.さらにレベルの高いサービスを提供するために今後も活動を継続していく必要がある.
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