人間ドック (Ningen Dock)
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原著
中年成人における生活習慣病や喫煙が頸動脈壁の動脈硬化と脳の加齢性変化に及ぼす影響
宍戸 淑子平林 和子小口 和浩多田 剛
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2013 年 28 巻 4 号 p. 646-653

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抄録
目的:中年者の生活習慣病と喫煙が頸動脈壁の動脈硬化と脳の加齢性変化に与える影響の解析.
方法:対象は40~55歳の無症候の脳ドック受診者1,132名.糖尿病・脂質異常症・高血圧症・高尿酸血症の検査値と治療歴を生活習慣病の変数,Brinkman indexを喫煙量の変数とした.「超音波検査で頸動脈の最大内膜中膜複合体厚≧1.1mm」を頸動脈壁の動脈硬化,「MRIでの脳萎縮,大脳白質変化,脳溝拡大,脳室拡大,脳梗塞あり」を脳の加齢性変化の指標とした.
結果:男性で年齢,脂質異常,高血圧が頸動脈壁動脈硬化と関連しており,年齢,糖尿病治療歴,高血圧が脳加齢性変化と関連していた.女性で年齢,脂質異常,高血圧が頸動脈壁動脈硬化と関連しており,年齢のみが脳加齢性変化と関連していた.対象者の喫煙率は日本平均より少なく,男女とも喫煙は脳加齢性変化,頸動脈壁動脈硬化に関連していなかった.また頸動脈壁動脈硬化と脳加齢性変化の間に有意な関連はなかった.
結論:男女とも加齢,脂質異常,高血圧が頸動脈壁動脈硬化を促進しており,男性では加齢,糖尿病,高血圧が,女性では加齢のみが脳加齢性変化を促進していることが示唆された.頸動脈壁動脈硬化は,脳加齢性変化より生活習慣病との関連が強くまた中年期から明らかになっているため,動脈硬化の早期マーカーとして有用性が高い可能性がある.
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© 2013 公益社団法人 日本人間ドック学会
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