抄録
目的:乳がん検診勧奨の気運が高まりつつある今,モダリティの選択や組み合わせによる検診精度の向上への最適なスタイルの確立が必要である.本研究では当クリニックでの乳がん検診で発見された乳がんの詳細を検討し,モダリティの組み合わせによる診断精度に関し検診間隔も含めて臨床検討を行った.
対象と方法:2009年6月~2013年3月に当院の任意型,対策型乳がん検診において乳がんが確定され,インフォームド・コンセントの得られた86例を対象とした.これらに対し,マンモグラフィと超音波検査のモダリティの組み合わせによるがん検出率,診断時点での病期分類の比較を行い,毎年の検診実施者の実態調査と両検査の併用検診の有用性も検討した.
成績:乳がん86症例のうち,視触診に加えてマンモグラフィ・超音波併用検診を行ったのは20例(23.3%)であり,その65%(13/20)が両検査で要精査と診断された.しかし,20%(4/20)は超音波検査で,15%(3/20)はマンモグラフィ検査でがんは非検出であった.毎年検診を受けていた症例のうち併用検診の習慣があったのはわずか21.4%であり,病期分類では63.6%(7/11)が0期乳がんであった.
結論:乳がん診断例の毎年のマンモグラフィ・超音波併用検診は浸潤癌の非検出率を低下させる可能性があると推測される.