2015 年 30 巻 1 号 p. 38-45
目的:胃がんリスク検診(ABC分類)で測定されるペプシノゲン(PG)およびヘリコバクター・ピロリ(Hp)抗体(Ab)と,上部消化管内視鏡(EGD)上の胃粘膜萎縮との関連を調査し,胃がん発生の可能性が高い中・高度胃粘膜萎縮(中高萎縮)を検出するに最適な方法と基準を明らかにすることを目的とした.
方法:2011年4月~2014年3月の3年間に,ABC分類とEGDを同日に受けた308例のうち,ABC分類が当健診センターにおいて初であり,Hp除菌歴なしと回答した175例を対象とし,対象者の胃粘膜萎縮度を,木村・竹本分類のC-3以上で中高萎縮とし,PGやHpAbとの関連を解析した.
結果:現行のABC分類ではA群に15.2%の中高萎縮が混入した.中高萎縮を峻別するためにはPGⅠ/Ⅱが4.7以下や,HpAbが4~5U/mL以上が最良点であった.ROC解析からは,中高萎縮の峻別にはPGⅠ/Ⅱが最良であったが,HpAbとの有意差はなかった.
結論:現行のABC分類ではA群に15.2%の中高萎縮が混入するが,PGⅠ/Ⅱを4.7やHpAbを5U/mLとしたカットオフ値を設定して仮ABC分類を定義すると,陽性率を有意に上昇させることなくA群の中高萎縮を7.8%へ半減させることができる.