人間ドック (Ningen Dock)
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30 巻, 1 号
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巻頭言
総説
原著
  • 萩原 美桜, 大塚 博紀, 児玉 ひとみ, 菅原 知紀, 藤田 映輝, 徳田 宇弘, 菅野 壮太郎, 小野田 教高
    2015 年 30 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:マンモグラフィ(MMG)の局所的非対称性陰影(FAD)は,正常乳腺でもみられるので,そもそもの陽性反応的中率(PPV)は低く,偽陽性率が高いので,特に健診施設では精度管理上の課題ともなっている.本研究においては,検診MMGでのFADによる要精密検査(精査)例に対し,乳房超音波検査(US)を追加し併用判定すれば,FADのPPVがどの程度向上するかを明らかにして,追加併用判定が,FADによる過剰な要精査判定を抑制する手段として有効かについて検討することを目的とした.
    方法:2013年1~12月に当センターの対策型,任意型MMG検診にてFADを指摘され要精査とされた204例のうち,精査を受診した171例を対象とし,診療録を調査しPPVを求めた.
    結果:FAD部位に,USにて「病変あり」は73例(42.7%)であり,73例中13例はさらに生検が必要であった.乳がんは6例であり,FADのMMG単独でのPPVは3.5%であった.よって,USを追加し併用判定すればPPVを46.2%まで向上させることができる.
    結論:MMGのFAD所見に対して,USを追加し併用判定すれば,FADに対するPPVは上昇し,偽陽性率を低下させることができ,FADによる過剰な要精査判定を抑制することができる.よって,偽陽性が心理的負担となる受診者には,その負担を軽減できるであろう.
  • 鈴木 朋子, 今井 瑞香, 窪田 素子, 北 嘉昭, 土田 知宏
    2015 年 30 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:腫瘍マーカーは早期がんでは上昇しにくい,偽陽性が多いなどの理由から,スクリーニングには不適格と考えられている.今回CA19-9について,受診者への適切な情報提供・精査への案内に役立てるデータを得るために,当センターでのCA19-9陽性的中率と高値例の傾向を検討した.
    対象:2006年1月から2013年6月までに,当センター人間ドックでCA19-9を測定した延べ32,508例中,高値(>37.0U/mL)を呈した延べ790例のうち,人間ドック高値後に計2回以上,当院(病院もしくは当センター)でCA19-9の再検を施行した320例を検討対象とした.
    方法:CA19-9はARCHITECT® アナライザー i 2000SR(アボット,東京)CLIA法にて測定し,正常値:0.0~37.0U/mLとした.
    結果:8症例にがんを認めた.内訳は膵臓がん4例,胆嚢管がん1例,十二指腸がん2例,大腸がん1例だった.8症例のがん診断時のCA19-9値の中央値は,198.2(46.4~2,968)U/mLだった.うち5例には過去に正常値の記録があり,残る3例は初回指摘だった.陽性的中率は2.5%だった.
    結論:CA19-9陽性的中率は2.5%と低率のため,CA19-9高値例を全例精査するのは非効率的だが,CA19-9高値とその推移だけで要精査群の抽出は困難と思われた.今後,臓器特異性の高いmicroRNAとの併用など,より効果的ながんスクリーニングの選択肢が増えることを期待する.
  • 堀江 弘子, 岩切 龍一, 黒木 茂高, 岩本 英里, 古賀 さやか, 田代 貴也, 小野 尚文, 江口 尚久, 中村 隆典, 柳澤 振一郎 ...
    2015 年 30 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:禁煙の啓発や推奨の向上には禁煙の有効性を示す情報提供が求められると捉え,禁煙導入から12週の期間に,BMI,血圧,呼気CO濃度,肺機能検査,酸化ストレスマーカーのd-ROMs(diacron reactive oxygen metabolites)テスト,高感度CRP(hs-CRP),血液一般検査を実施し禁煙治療の有用性を検証した.
    方法:当院の禁煙治療の患者66名を対象に,初回0週と終了12週の経過ですべての検査項目の推移,特にd-ROMsテストに注目して比較検討の分析を試みた.
    結果:検査値の推移に有意差を認めた項目は,呼気CO濃度とd-ROMsテスト値であり,d-ROMsテスト値の推移は,禁煙開始の早期4週で改善し,12週でも改善を維持していることが判った(p<0.01).また0週の肺機能検査1秒率(FEV1/FVC)(以下,1秒率)の違いで,d-ROMsテスト値の推移に差がみられるかについての検討では,1秒率が70%以上で禁煙すれば,d-ROMsテスト値は有意に低下することが判明した(p<0.01).
    結論:今回の検討で禁煙の有効性として酸化ストレス状態の改善がみられること,さらに1秒率が70%以上ある段階での禁煙開始はより有効であることがわかり,d-ROMsテストは禁煙の短期効果を知る有用な因子となる可能性を含んでいる.
  • 藤田 映輝, 大塚 博紀, 河村 正敏, 萩原 美桜, 菅原 知紀, 徳田 宇弘, 菅野 壮太郎, 小野田 教高
    2015 年 30 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:胃がんリスク検診(ABC分類)で測定されるペプシノゲン(PG)およびヘリコバクター・ピロリ(Hp)抗体(Ab)と,上部消化管内視鏡(EGD)上の胃粘膜萎縮との関連を調査し,胃がん発生の可能性が高い中・高度胃粘膜萎縮(中高萎縮)を検出するに最適な方法と基準を明らかにすることを目的とした.
    方法:2011年4月~2014年3月の3年間に,ABC分類とEGDを同日に受けた308例のうち,ABC分類が当健診センターにおいて初であり,Hp除菌歴なしと回答した175例を対象とし,対象者の胃粘膜萎縮度を,木村・竹本分類のC-3以上で中高萎縮とし,PGやHpAbとの関連を解析した.
    結果:現行のABC分類ではA群に15.2%の中高萎縮が混入した.中高萎縮を峻別するためにはPGⅠ/Ⅱが4.7以下や,HpAbが4~5U/mL以上が最良点であった.ROC解析からは,中高萎縮の峻別にはPGⅠ/Ⅱが最良であったが,HpAbとの有意差はなかった.
    結論:現行のABC分類ではA群に15.2%の中高萎縮が混入するが,PGⅠ/Ⅱを4.7やHpAbを5U/mLとしたカットオフ値を設定して仮ABC分類を定義すると,陽性率を有意に上昇させることなくA群の中高萎縮を7.8%へ半減させることができる.
  • 赤池 淳, 渡邉 不二夫, 平塚 正幸, 今村 哲理, 髭 修平, 狩野 吉康, 豊田 成司
    2015 年 30 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)と診断された症例において,線維化進展例の適切な拾い上げが求められている.NAFLDの肝線維化進行に糖尿病が関与し,肝線維化予測にFIB-4 indexが有用との報告がある.そこで,健診におけるNAFLD症例の耐糖能異常と他因子との関係を明らかにすることを目的に検討を行った.
    方法:NAFLDと診断された1,638例を対象とし,空腹時血糖(FBS),HbA1cを用いて耐糖能異常の程度でAからDの4群に分類し,A群(FBS<100mg/dLかつHbA1c≦5.5%),B群(FBS 100~109mg/dLもしくはHbA1c 5.6~5.9%),C群(FBS 110~125 mg/dLもしくはHbA1c 6.0~6.4%),D群(FBS 126mg/dL以上もしくはHbA1c 6.5%以上)とした.各群における年齢,性別,腹囲,血圧,脂質異常,血小板,肝機能,FIB-4 indexを比較した.
    結果:各群(B/C/D群)の年齢,FIB-4 indexはA群と比較すると有意に高値で,肝機能はA群とD群との間で有意差を認めた.メタボリックシンドローム因子の合併については,血圧は各群で,腹囲はA群とD群で,脂質異常はA群とC,D群の間で有意差を認めた.
    結論:耐糖能異常の程度とメタボリックシンドローム因子の合併は相関し,FIB-4 index高値や血小板数低値もみられ肝線維化との関連性が示唆された.健診におけるNAFLDでの進展例拾い上げのために,耐糖能異常やFIB-4 indexの活用が重要と考えられた.
  • 伊能 幸雄, 小西 由里子, 宮本 瑠美, 東 拓弥, 篠田 誠, 村永 信吾
    2015 年 30 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,メタボリックシンドローム(以下,メタボ)対策の運動療法をより安全に行うために,当院人間ドック受診者に対してロコモーションチェック(以下,ロコチェック)および立ち上がりテストを行い,その実態と対応を検討することである.
    方法:2012年3月13日~11月30日に当院人間ドックを受診した男女723名を対象に,ロコチェック,体格・体組成測定,下肢の機能的筋力の検査である立ち上がりテストを実施.対象者をロコチェック陽性群,メタボ群,重複群,健常群に分類し,人数比率,体格・体組成,立ち上がりテストの結果を比較した.
    結果:全対象者のうちロコチェック陽性群は20.9%,メタボ群は12.3%,重複群は7.5%,健常群は59.3%であった.立ち上がりテストは,男性において,同年代の健常群と比較して50歳代の重複群および60歳代のロコチェック陽性群で有意に低値であった.また,体格・体組成の指標であるBMI,体脂肪率(以下,% fat),除脂肪体重/身長(以下,LBM/m)については,ロコチェック陽性群と健常群との差は認められなかった.
    結論:メタボ該当者のなかにはロコチェックにも重複該当しているものが存在し,それらの下肢の機能的筋力は低値であった.ロコチェック陽性者の検出は,現在の人間ドックで行っている体格・体組成測定では難しい.したがって,運動器の不具合を早期にスクリーニングし,メタボ対策としての運動療法をより安全に行うためには,ロコチェックや下肢の機能的筋力検査を行い,個々の運動機能の程度にあわせた運動処方を行う必要があると考える.
  • 大水 智恵, 小野寺 博義, 小野 博美, 手嶋 紀子, 近 京子, 渋谷 大助
    2015 年 30 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:主膵管の変化をとらえることは膵疾患の診断に有用性が高く,また膵管拡張が膵がんのハイリスクであるとの報告もあることから,腹部超音波検査にて主膵管の拡張を認めた症例のその後について調査し,経過観察をどうすべきかを検討した.
    方法:対象は平成8年4月から平成25年3月に,当協会の腹部超音波検診にて膵管拡張が指摘された162症例である.さらにそれらの症例のうち,当協会が検診後約1ヵ月に実施している2次超音波検査(US)を受診した症例を,2次USでも膵管拡張を認めたA群(31例)と,認めなかったB群(98例)に分けて比較検討した.
    結果:血液検査データには両群間で有意差を認めなかった.A群からは慢性膵炎5例,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)3例,膵嚢胞1例,膵がん1例が発見された.B群からも2年後に膵がんのハイリスクとされる膵嚢胞2例,8年後に粘液非産生性膵管内乳頭粘液腫瘍1例が発見された.
    結論:膵管径は生理的に経時的な変化をすることが知られており,検診後に拡張が消失した場合は積極的には経過観察を行っていなかった.しかし,そのような場合にも経過観察が必要であると考えられた.
  • 石黒 久美子, 半藤 保, 石黒 義隆, 小川 弘良, 笠井 真由美, 阿部 エミ, 小山 麻美, 金田 由美子, 筧 映里, 村山 実
    2015 年 30 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:子宮頸がん検診受診者のうち,経腟超音波断層診断法(以下,経腟超音波法)により無症状閉経者の子宮内膜厚を測定し,子宮内膜厚異常者から,子宮体がんをはじめとしたどのような子宮内膜疾患が見つかるかを明らかにする.
    方法:経腟超音波法を希望した無症状閉経後の子宮頸がん検診受診者4,794人を対象とし,子宮内膜厚5mmないしそれ以上のもの37人を二次検診の対象とした.二次検診法は経腟超音波法再検,子宮内膜細胞診,子宮内膜組織診,ヒステロスコピー,MRI,血中エストロゲン測定など担当医の判断で実施した.
    結果:二次検診結果の判明した30人は,子宮体がん1人,子宮内膜増殖症1人,子宮内膜ポリープ3人,子宮筋腫により子宮内膜肥厚と判断されたもの2人,子宮留水腫1人のほか,子宮内膜細胞診異常なし15人,子宮内膜組織診異常なし7人であった.また,閉経後婦人に本法を受け入れてもらえるか否か,任意・無記名アンケートによる調査を行った結果,その受容性は良好であった.
    結論:子宮頸がん検診に併用した経腟超音波法による子宮内膜厚測定は子宮体がんをはじめ,子宮内膜増殖症,子宮内膜ポリープ,子宮留水腫,子宮粘膜下筋腫など,各種疾患発見への端緒となるため臨床的に有用と判断された.
症例報告
  • 丸山 勝, 森 貴子, 三枝 義信, 小田 福美, 坂口 正髙, 古畑 総一郎, 永吉 実紀子, 鈴木 丈夫
    2015 年 30 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:無症候性の上腸間膜動脈(以下,SMA)瘤の報告はごくまれであり,超音波検査についての報告は少ない.我々は人間ドックで経験した症例について,その超音波像を検討した.
    方法:人間ドック時の超音波検査でSMA拡張像を呈していた7例について,①軸と直交する最大径,②軸方向の瘤の広がり,③瘤に近接する正常血管径,④SMA起始部から瘤までの距離,⑤FLAP様構造の有無の5項目を評価した.
    結果:7例は全員男性で,年齢は59.9±25.1歳(平均±2SD)(39~76歳)であった.超音波検査での計測値は瘤径:9.8±1.2mm(8.6~10.3mm),瘤の範囲:26.6±23.2mm(17.2~50.1mm),正常部血管径:6.2±1.7mm(4.8~6.9mm),SMA起始部から瘤までの距離:24.0±13.9mm(12.4~30.7mm,2例は計測できず)であった.7例中3例で,内腔にFLAP様の構造を認めた.
    結論:SMAの病変は急性腹症として報告されることが多く,人間ドックで指摘されることはごくまれである.背景として,拡張像を呈していても気付かない,消化管ガスの影響で描出できない,観察対象とされていないことが考えられる.人間ドック等のスクリーニング超音波検査でも無症候性のSMA病変を念頭におき検査することで,所見の検出が可能になると考えられる.
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