2018 年 33 巻 1 号 p. 35-42
目的:前立腺がん患者と健常人の血漿中アミノ酸濃度の統計解析により開発されたアミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AICS(前立腺))は,前立腺がんの早期発見のためのスクリーニング検査として実用化されている.一方,血漿中アミノ酸変化と前立腺がん発症との因果関係については,十分に解明されていない.本報告では,AICS(前立腺)のスクリーニング検査としての特性の明確化を目的として,前立腺がん患者で前立腺全摘除術を施行した症例を対象に,AICS(前立腺)の術前後における変化について検討した.
方法:前立腺がんに対して前立腺全摘除術を施行し,現在まで生化学的再発が認められない64例を対象とした.術前1週以内,術後約半年後に午前中空腹時採血を行い,血漿分離後に液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS)を用いてアミノ酸濃度を測定し,AICS(前立腺)値を算出し,術前と術後の変動を解析した.
結果:術前AICS(前立腺)値がランクBまたはCであった56症例中49例(88%)で術後値は低下を示し,ランクに関しても56例中42例(75%)で低いランクに移行していた.さらに,術前ランクCであった42症例に限ると39例(93%)で術後値は低下を示し,術後ランクは42例中33例(79%)で低下していた.
結論:前立腺全摘除術後では,AICS(前立腺)値およびランクは術前よりも低下することから,AICS(前立腺)は前立腺の担がん状態を反映したスクリーニングマーカーであることが示唆され,その有用性が示された.