2021 年 36 巻 4 号 p. 560-567
目的:認知症の予防のためには,バイオマーカーによるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)や軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)の早期発見と早期介入が重要である.今回,血漿を用いてアポリポタンパク質A1,トランスサイレチン,補体タンパク質C3からなるトリプルマーカーとAβ40,Aβ42の同時測定を行い,MCIとAD診断における臨床有効性を検討した.
方法: AD 178例,MCI 145例,認知機能健常高齢者(Non-demented control: NDC)40例を用いて,血漿Aβ40,Aβ42ならびにトリプルマーカーの測定を行い,その臨床有効性について解析した.
結果:トリプルマーカーの定量値は認知機能障害の進行に伴い低下し,ROC曲線でAUC値=0.81(AD vs. NDC),AUC値=0.74(MCI vs. NDC)であった.Aβ40/42比では,AUC値=0.71(AD vs. NDC),AUC値=0.62(MCI vs. NDC)であった.さらにAβ40/42比にトリプルマーカーを加えることで,AD vs. NDCでAUC値は0.85(感度80%,特異度85%),MCI vs. NDCでAUC値は0.81(感度77%,特異度73%)となり,AD,MCIとNDCの識別において高い臨床有効性を示した.
結論:トリプルマーカーとAβ40/42比を用いた血液検査は,MCIからADまで病態進行をカバーする物忘れ健診に役立つことが期待される.