2023 年 37 巻 5 号 p. 808-814
今回我々は,人間ドックでの心電図検査でWellens症候群を疑い,通院医療機関との連携によって早期診断,早期治療に成功した症例を経験した.症例は60代男性,狭心症と慢性腎臓病にて通院治療を受けていた.人間ドック心電図検査において前回記録にはなかった二相性T波がV3-5誘導に認められた.人間ドック受診時に胸痛はなかったが,1ヵ月前から時々朝に胸痛を自覚していた.Wellens症候群を疑い通院医療機関への早期受診を勧めた.冠動脈造影にて左前下行枝近位部に高度狭窄が認められ,同部位に経皮的冠動脈インターベンションが実施された.経過は良好,心電図は2ヵ月後に正常化した.
Wellens症候群は,不安定狭心症の一種であり,胸痛がない時間帯のV2-3誘導における深い陰性T波あるいは二相性T波を特徴とする.前下行枝近位部に高度の狭窄病変が存在し,血行再建治療なしでは数日から数週以内に75%が広範前壁梗塞を発症する.この心電図変化は時に非特異的変化として見過ごされることがあることから,循環器内科,救急診療科領域では注意喚起がなされてきた.
人間ドックでの心電図判読に際してもWellens症候群を見過ごさないようにせねばならない.前胸部誘導にT波の変化を認めた際には,受診者の胸部症状を確認するとともに,過去の心電図波形との比較検討を行うことが大切である.