人間ドック (Ningen Dock)
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原著
健康診断受診者における2枝ブロックの有病率とその特徴
松尾 史朗野田 吉和中安 邦夫横山 剛義本間 智美
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2023 年 38 巻 1 号 p. 30-37

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抄録

目的:2枝ブロックは完全房室ブロックの前段階であり,構造的心疾患や虚血性心疾患を高率に合併する死亡率の高い疾患と考えられている.しかし,健康診断では,心イベントを生じることなく長期間経過している2枝ブロックを診ることが少なくない.そこで我々は,健康診断における2枝ブロックの有病率とその特徴を明らかにするため本研究を計画した.

方法:2021年度に心電図検査を受けた41,303名を対象とした.完全右脚ブロックに左脚前枝または後枝ブロックが併存する者を2枝ブロック,さらに第1度房室ブロックを伴う者を3枝ブロックとし,有病率,年齢,罹病期間,合併心疾患,心イベントを調査した.

結果:2枝ブロックは110名(男性90名,女性20名)で認められ,有病率は0.27%(男性0.40%,女性0.11%)であった.年齢および罹病期間の中央値は65歳と3年であり,罹病期間中の心イベント発生は3件であった.12名(11%)に心疾患が認められた.内訳は構造的心疾患5名(5%),虚血性心疾患2名(2%),進行性家族性心臓ブロック2名(2%),不整脈3名(3%)であった.2枝ブロックの種別,第1度房室ブロック併存の有無によって,心疾患の合併率が変わることはなかった.

結論:2枝ブロックは健康診断受診者の0.27%に存在し,まれな疾患ではない.これまでの病院受診者を対象とした研究報告とは異なり,心イベントを発生することなく経過している者が多く存在し,基礎心疾患を持つ者の割合も少なかった.

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© 2023 公益社団法人 日本人間ドック学会
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