2023 年 38 巻 1 号 p. 7-17
1983年に発見されたヘリコバクターピロリ(Hp)により胃がんをはじめとする上部消化管疾患の考え方が一変した.人間ドックなど予防医療においてもHpスクリーニングは重要と考えられる.Hpの各診断法の長所・短所を理解したうえで有効活用し,また,保険診療と連携して除菌治療を勧め,胃がんリスクを低下させるべきである.そして,Hp感染状態により発生する疾患や胃がんの特徴を理解したうえで内視鏡を中心としたサーベイランスが望まれる.今後の参考になるように40年間のHpの研究・診療・スクリーニングの歴史を振り返りながら知見をまとめた.この40年間で我が国のHp感染率は急速なスピードで低下し,また,除菌治療も普及した.人間ドックにおいてもHp現感染者の占める割合は非常に低くなり,疾患スペクトルが変化しており,その対応も大切である.先入観にとらわれず,事実を検証する姿勢は予防医療においても求められる.