抄録
目的:メタボリックシンドローム(metabolic syndrome:MS)は内臓脂肪の蓄積を基盤として動脈硬化性疾患を発症させる状態である.日本におけるMS診断基準では男性で腹囲85cm以上,女性で90cm以上を必須項目としている。これは内臓脂肪面積が100cm2以上を腹囲では男性で85cm以上,女性で90cm以上に相当すると考えられているためである。そこで腹囲と内臓脂肪面積の関連性を当クリニックの受診者の健診結果と生活習慣から検証することを試みた.方法:当院で2006年10月から12月までに腹部CT検査を実施した男性176名を対象とし,CT画像より得られた内臓脂肪面積と腹囲との相関と,さらに生活習慣との関連を問診票から検討を試みた.結果:男性では腹囲と内臓脂肪面積に正の相関が得られ,統計学的に妥当であると考えられた.また腹囲85cm未満でも内臓脂肪面積100cm2以上者が20.2%含まれ,内臓脂肪面積100cm2未満でも腹囲85cm以上者が22.5%存在した.生活習慣では喫煙,飲酒の習慣がありさらに腹囲や内臓脂肪がMSの基準値以上者に体脂肪率,BMI,肝機能,尿酸,中性脂肪が有意に高かった.結語:男性におけるMSの診断基準である腹囲85cm以上は内臓脂肪面積100cm2以上であることと統計学的に同等であるが,20%の見逃しが発生していることを念頭におくべきである.また飲酒,喫煙習慣者で腹囲や内臓脂肪がMSの基準値以上者では同じ飲酒,喫煙習慣者より中性脂肪が有意に高く,HDLコレステロールが低い傾向であった.