抄録
目的:経鼻内視鏡検査では挿入時鼻腔痛を伴うことが多い,今回われわれは,経鼻内視鏡検査の鼻腔対策として,16Frネラトンカテーテルの鼻腔留置による前処置法の有用性を評価した.対象と方法:平成18年1月から3月の間に,嘔吐反射が特に強い80名の受診者に経鼻内視鏡検査(GIF-N260)を施行した。前処置にネラトンカテーテルを使用しないA群(40例)と使用するB群(40例)に無作為に分け,痙痛や苦痛度をアンケート調査した.鼻腔粘膜の基礎麻酔として4%塩酸リドカイン液9ml+0.1%エピネフリン液1ml混合液を噴霧した.結果:アンケート調査による挿入時の鼻腔痛の程度(0-10)は,男性でA群4.1±24,B群38±1.9,女性でA群45±23,B群3.2±2.1であり,女性のB群ではA群に比較して有意に少なかった(p<0.05).検査全体からみた総合的な苦痛度は,男性でA群2.7±1.1,B群2.8±14,女性でA群39±2.2,B群2.2±1.1であり,女性のB群でA群に比較して有意に少なかった(p<0.05).次回の検査方法に経鼻内視鏡を希望する割合は,女性のB群でA群に比較して有意に高率であった(p<0.5).結語:女性における経鼻内視鏡検査では,基礎麻酔にネラトンカテーテル留置による前処置を加えることで,鼻腔の疼痛を軽減させ,検査全体の苦痛度の低下も得られた.