西日本皮膚科
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治療
皮膚の糜爛, 潰瘍に対する外用アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート粉末剤(ISP)の臨床治療成績
—アルキサ軟膏との比較検討—
ISP臨床研究班
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1982 年 44 巻 4 号 p. 690-697

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抄録
アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネートを含有する粉末剤(ISP)の皮膚糜爛, 潰瘍に対する治療効果を検討するために同成分を主薬とするアルキサ軟膏(AL)を対照薬として, 5施設にてハーフサイドテストおよび対比較により臨床治療試験を行つた。対象は25症例であつて潰瘍21例, 糜爛4例であり, その原因はきわめて多種多様であつた。臨床症状に対する効果は統計学的に両剤間に有意差を認めず, 有用性の判定においても, 有意差は認められなかつたが, ISPは網状植皮部および中間層採皮部に対してきわめて有用と判定されたものが2例あり, ALにはきわめて有用と判定された例はなかつた。ISPは粉末剤であるため局所を乾燥させる作用があり, 局所の表皮再生能力の強い病巣では過度の湿潤を抑え表皮の再建に有利な環境を作るが, 局所に表皮再生能力がなく植皮を必要とするような広範囲な潰瘍に対しては他の外用薬同様, あまり効果が認められなかつた。ISPの局所に対する副作用はほとんどなく, 今回の治療に際しても25例中3例に必ずしもISPによるとは思われない軽度の刺激作用を認めるのみで, 刺激の頻度はALと同程度であつた。しかしながら, 他の外用剤と同様に本剤使用に際しても常に刺激作用の有無を観察しつつ慎重に治療にあたるべきである。以上よりISPは粉末形態の外用剤であるが, 皮膚の糜爛, 潰瘍の治療剤として有効であるので, 治療に際して選択すべき治療剤の一つであると考えられる。
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© 1982 日本皮膚科学会西部支部
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