西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
マダニの人体咬着2例
安川 恭子藤野 隆博石井 洋一北岡 茂男
著者情報
ジャーナル 認証あり

1984 年 46 巻 2 号 p. 492-497

詳細
抄録

福岡市東区の北部に位置する三日月山(標高230m)とそれに続く立花山(標高367m)においてマダニに咬着された2例を報告した。1例目は49才の男子で, 立花山のみかん畑で下草刈をしていて左腋窩に咬着され, 2例目の8才女児は, 三日月山に遊びに行つて頭頂部に咬着された。1例目のマダニは虫体破損のため種の同定はできなかつたが, 2例目はキチマダニ, Haemaphysalis flava Neumann, 1897の雌成虫と同定された。この種は日本全土にもつとも多く分布し, 成虫は平地ないしは丘陵地で多種の野生動物や家畜に寄生することが知られている。人体咬着の報告は少なく, 従来6例が知られているが, 九州では2例目である。上記2例目で所属リンパ節の腫大がみられたほかは, 2例とも発熱などの全身症状はみられなかつた。虫体除去後, 咬着部位は治療により1∼2週間で治癒し, 予後は良好であつた。患部より摘除されたキチマダニの虫体各部の微細形態を走査電子顕微鏡を使用して観察した。

著者関連情報
© 1984 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top