西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
中心に巨大な嚢腫様構造を認めたMalignant Proliferating Trichilemmal Cyst
加藤 則人小西 啓介小林 和夫岸本 三郎安野 洋一
著者情報
ジャーナル 認証あり

1991 年 53 巻 5 号 p. 965-968

詳細
抄録

51歳女子の臀部に生じたmalignant proliferating trichilemmal cyst(以下MPTCと略)の1例を報告した。数十年前より存在した腫瘤が急に増大し始め, 中央には鶏卵大の嚢腫状波動を認めた。嚢腫壁の試験切除にてMPTCと診断, 腫瘍全摘術および鼠径リンパ節郭清術を施行し, その後現在まで再発, 転移を認めていない。摘出した嚢腫の内腔は直径5cm, 表皮と連続せず皮下組織から筋層に達しており, この巨大な嚢腫の壁は小嚢腫の集合により構成されていた。小嚢腫の壁は最外層に基底細胞様細胞, その内腔側に淡明細胞, そして最内層では外毛根鞘性角化を示して角化するという一定の組織構築を示した。自験例のように中心に巨大な嚢腫を有するMPTCの報告は他にみられず, きわめてまれな症例と思われ, またその発生過程としてtrichilemmal cystが増殖性変化, 悪性化したものと推測した。

著者関連情報
© 1991 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top