西日本皮膚科
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53 巻, 5 号
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図説
綜説
  • —皮膚に内在するサンスクリーン
    花田 勝美
    1991 年 53 巻 5 号 p. 915-921
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    紫外線UVB障害に対する生体防御について, 皮膚に内在するメタロチオネインをひとつの光防御因子と考え, カドミウムにより誘導されるメタロチオネインの抑制効果と有用性について論じた。メタロチオネインは特定の金属により細胞質内に誘導され, 選択的に金属と結合する。他方, システインに富み, 活性酸素のスカベンジャーとしての作用も期待できる。カドミウムはメタロチオネインの代表的な誘導剤であるので, カドミウムをマウスに投与後, UVBを耳介皮膚に照射すると, 表皮のsunburn cell形成が抑制される。また, カドミウム処理した培養細胞はUVB照射に対する抵抗性を獲得する。こうした光防御は-SH基の豊富なメタロチオネインの抗酸化能によるものと考えられている。すなわち, 誘導メタロチオネインは皮膚の内在性サンスクリーンになりうることが示唆される。内在性のサンスクリーンは, 安全性, 広範な紫外線照射に対応できる点で, 外用サンプロテクション剤を補い得る。臨床応用のためには, 生体に安全なメタロチオネイン誘導剤の選択が必要である。
症例
  • 幸田 弘, 成沢 寛, 中川原 章
    1991 年 53 巻 5 号 p. 922-924
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    生下時からあり, 徐々に増大する手指の結節の2例を報告した。結節は拇指頭大の弾性軟ないし硬の結節で, 褐色調を呈し表面粗ぞうで散在性に黒褐色点状物がみられる。組織所見はverrucous hemangiomaに属するが, さらに真皮の膠原線維の増生を伴う。同様の症例はこれまでに報告をみないように思われるので, digital verrucous fibroangiomaとして報告した。
  •  
    坂 昌範, 桑原 まゆみ, 清島 真理子, 米田 和史, 黒川 敏郎
    1991 年 53 巻 5 号 p. 925-929
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    71歳, 男子。初診: 平成元年4月25日。昭和61年10月頃より両膝蓋部に鱗屑を伴った淡い紅斑が出現し, 乾癬と診断された。多発性骨髄腫(IgG, κ型)のため, 厚生連久美愛病院内科にて平成元年3月27日よりインターフェロン-α-2a(IFN-α-2a, キャンフェロンA®)の投与を開始。4月半ばより, 顔面, 上腕, 肘部, 背部, 臀部, 下腹部, 下肢などに軽度の白色鱗屑を伴った境界明瞭な紅斑を認めるようになった。生検により初期の乾癬皮疹と診断。以後IFN-α-2aの投与, 中止に伴い, 皮疹の悪化, 消褪が繰り返しみられた。高血圧のため以前よりβ-ブロッカー(カルビスケン®), アンジオテンシン変換酵素阻害剤(レニベース®)を常用していた。IFN-α-2a投与後の発熱に対してジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®)を投与された時期もあった。乾癬の悪化にはこれら薬剤が影響している可能性もあるが, 皮疹の経過から判断して悪化要因の主体はIFN-α-2aと考えた。
  • —病型分類について—
    小宮根 真弓, 福中 秀典, 盛岡 奈緒子, 渡辺 亮治, 大塚 藤男
    1991 年 53 巻 5 号 p. 930-933
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    31歳, 女子。発熱, 全身倦怠感などの全身症状を伴い, 急激に膿疱および紅斑が汎発した。組織は表皮肥厚を伴う角層下膿疱で, 一部にKogojの海綿状膿疱の所見を認めた。汎発性膿疱性乾癬と診断し, ステロイドの外用を行っていたが, 増悪緩解を繰返すためPUVAによる治療を開始したところ, 皮疹の増悪はみられなくなり現在まで良好にコントロールされている。経過中尋常性乾癬の皮疹は認められなかった。本症を含めて過去10年間の汎発性無菌性膿疱性疾患の本邦報告例を文献的に検討したところ, 汎発性膿疱性乾癬が110例, 汎発性稽留性肢端皮膚炎が5例, 疱疹状膿痂疹が39例報告されていた。しかしながら, 汎発性膿疱性乾癬として報告された中にも, 汎発性稽留性肢端皮膚炎や, 疱疹状膿痂疹と診断可能と考えられる症例が数例みられた。疱疹状膿痂疹として報告された症例中, 妊娠と無関係なものは19例(48%)で, 診断の決め手に欠ける症例が多数みられた。
  • 水足 久美子, 平井 俊二, 小野 友道
    1991 年 53 巻 5 号 p. 934-937
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    46歳男子。掌蹠膿疱症(PPP)に亀頭部疹と尿道炎を併発した。亀頭部は, 炎症性角化性病変であったためライター病を疑ったが, 関節炎, 結膜炎を認めずHLA B-27も陰性でありライター病の診断基準は満たしていない。しかし乾癬, ライター病とPPPの関連を考える上で, 興味ある症例と考えられた。
  • 山川 有子, 大勝 美保, 石井 晴美, 一山 伸一, 佐々木 哲雄, 中嶋 弘
    1991 年 53 巻 5 号 p. 938-944
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    73歳, 女子に生じたtransient acantholytic dermatosis(TAD)の1例を報告した。初診日の約1ヵ月前に頭部, 前額部にそう痒性皮疹が出現し, 半月前にはほぼ全身に拡大し, 臨床的には自家感作性皮膚炎が疑われた。病理組織学的に棘融解細胞, 表皮内水疱, 海綿状態が認められたが, 蛍光抗体直接法·間接法ともに陰性であった。抗ヒスタミン剤内服とステロイド軟膏外用を行い, 約1ヵ月で軽快した。以上よりTADと診断した。なお, Avidin-biotin-peroxidase complex(ABC)法で浸潤単核細胞は, Leu1, Leu2a, Leu3aがそれぞれ, 65, 30, 70%陽性で, TADの病態としてT細胞の関与も示唆された。
  • 浅野 さとえ, 岡部 省吾, 池田 美智子
    1991 年 53 巻 5 号 p. 945-950
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    職場内で感染したと思われる2例の男子成人麻疹を経験した。症例1は23歳男子で高熱, 皮疹, 下痢を主訴として来院し同日入院。麻疹既往を主張したため, 伝染性単核症として治療されたが, 皮疹より麻疹が疑われた。入院翌日より, 呼吸困難出現, 心陰影の増大, CPKの上昇, 心電図所見より, 心筋炎合併と診断された。血清学的所見より, 麻疹と確定診断された。10日頃より複視と頭痛が出現, 外転神経麻痺と診断され, 麻疹後脳炎が疑われたが, 次第に軽快し約2ヵ月後治癒退院した。症例2は22歳男子で高熱, 血尿を主訴とし, 当院内科入院, 入院後皮疹出現, 翌日呼吸困難出現, 心筋炎合併の麻疹と診断された。症例1, 2はその後職場が同一であることが判明, 発症のずれが13日であることから症例2は症例1より感染したと考えられた。麻疹の合併症としては肺炎, 脳炎が良く知られているが, 心筋炎の合併は稀であり報告は少ない。心筋炎合併の2麻疹例を報告すると共に, 麻疹ウイルスの構造, 特殊性, 変異など, 近年注目されている事項について言及した。
  • 安部 小百合, 磯田 美登里
    1991 年 53 巻 5 号 p. 951-955
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    顔面, 四肢に生じたSweet症候群とほぼ同時期に急性骨髄性白血病(AML)と診断された46歳女子例を報告した。右頬部, 左第2指, 右前腕, 両下肢に有痛性の浸潤性隆起性紅斑ないしは多形紅斑様皮疹を認めた。組織学的には, 好中球を含んだ表皮下水疱, 真皮浅層∼中層の瀰漫性の好中球浸潤がみられた。化学療法によりAMLの血液学的所見が改善するにしたがって皮疹も消退していったが, AMLの再燃に伴ってSweet症候群も再発した。
  • 西 隆久, 百武 由美子, 幸田 弘
    1991 年 53 巻 5 号 p. 956-959
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    68歳および64歳の左肩甲下部に生じた弾性線維腫を報告した。出身はともに佐賀県で, 1例は現在電気店を経営していて, 肉体労働の既往はない。他の1例は農家の主婦である。文献上佐賀県出身者の本症は, 自験例を含めて3例のみである。
  • 徳橋 至, 森田 誠, 大倉 光裕, 鰺坂 義之, 関 建次郎, 高桑 俊文
    1991 年 53 巻 5 号 p. 960-964
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    Desmoplastic trichilemmoma, 2個のsebaceous epithelioma, syringocystadenoma papilliferumを合併した脂腺母斑の39歳男子例を報告した。Desmoplastic trichilemmomaは1989年Huntらにより提唱された疾患概念で病理組織学的特徴としてはtrichilemmomaの組織所見に加えて腫瘍の一部に樹枝状に細く延長した腫瘍細胞索と周囲の結合織の増生である。Basal cell epithelioma, squamous cell carcinomaの間質への浸潤像に類似するため診断には十分な注意が必要である。脂腺系腫瘍においてはその分類に混乱があり, sebaceous epitheliomaとadenomaとの鑑別の困難な症例も少なくない。抗EMA(epithelial membrane antigen)抗体は成熟脂腺細胞に陽性で脂腺細胞の成熟度の判定に利用しうると思われた。これをZackheimの鑑別基準に補足することでより正確な診断が可能になると考えた。
  • 加藤 則人, 小西 啓介, 小林 和夫, 岸本 三郎, 安野 洋一
    1991 年 53 巻 5 号 p. 965-968
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    51歳女子の臀部に生じたmalignant proliferating trichilemmal cyst(以下MPTCと略)の1例を報告した。数十年前より存在した腫瘤が急に増大し始め, 中央には鶏卵大の嚢腫状波動を認めた。嚢腫壁の試験切除にてMPTCと診断, 腫瘍全摘術および鼠径リンパ節郭清術を施行し, その後現在まで再発, 転移を認めていない。摘出した嚢腫の内腔は直径5cm, 表皮と連続せず皮下組織から筋層に達しており, この巨大な嚢腫の壁は小嚢腫の集合により構成されていた。小嚢腫の壁は最外層に基底細胞様細胞, その内腔側に淡明細胞, そして最内層では外毛根鞘性角化を示して角化するという一定の組織構築を示した。自験例のように中心に巨大な嚢腫を有するMPTCの報告は他にみられず, きわめてまれな症例と思われ, またその発生過程としてtrichilemmal cystが増殖性変化, 悪性化したものと推測した。
  • 矢野 光政, 大野 まさき, 西本 勝太郎
    1991 年 53 巻 5 号 p. 969-973
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    66歳男子の顔面, 頸部にepidermal cystを多発したBourneville-Pringle母斑症の1例を報告した。家族内には同症はなく, 既往歴では痙攣発作, 知能障害も認めなかった。皮膚科的には, epidermal cystの他顔面のいわゆる脂腺腫, 頸部から項部にかけての懸垂性軟属腫, 左右上腕などの葉状白斑, 爪縁部のいわゆるKoenen腫瘍を認めた。その他, 良性の肺腫瘍, 側脳室石灰化, 両側腎の嚢腫, 左腎のangiomyolipomaが見出だされた。本症の本邦皮膚科医による過去10年間の報告例は文献上51例であったが, epidermal cyst合併の記載は自験例のほか1例のみであった。
  • 松野 美智雄, 城野 昌義, 小野 友道
    1991 年 53 巻 5 号 p. 974-976
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    63歳男子。10年ほど前から慢性湿疹の診断のもと数施設の皮膚科で各種コルチコステロイド外用剤を断続的に処方されていた。初診2週間前に使用したプロピオン酸クロベタゾール軟膏を湿疹に対し外用したところ増悪傾向を示した。プロピオン酸クロベタゾール軟膏での接触性皮膚炎を疑い本剤各成分についての貼付試験を行った。主剤であるプロピオン酸クロベタゾールが原因と判明した。
研究
  • —トリプシン·塩酸法の応用—
    村井 博宣, 真家 興隆
    1991 年 53 巻 5 号 p. 977-981
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    後天性色素性母斑の1例について, トリプシン·塩酸法に超音波洗浄を加えた変法で処理し, 走査電顕的に観察した。母斑細胞周囲の膠原線維やextraceller matrixが除去され, 桑の実状の母斑細胞のnestや, そのnest間の線維芽細胞, 母斑細胞の突起などが三次元的に観察された。また, 母斑細胞表面には多数の絨毛状の小突起や, pinocytotic vesicleに相当する小陥凹が認められた。
  • —北海道内の学校医に対するアンケート調査—
    笹嶋 由美, 飯塚 一
    1991 年 53 巻 5 号 p. 982-988
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    平成元年10月, 北海道内の小学校を担当している学校医259名(有効回答数133)に対し, 健康診断と皮膚検診, 内科検診におけるアトピー性皮膚炎のチェックについてアンケート調査を行った。
    1) 学校医のほとんどは内科·小児科医で占められており, 皮膚科医はまったくみられなかった。
    2) 92%の学校医が内科検診時に皮膚検診を行っており, また, 学校医の72%が, 内科検診時にとくに注意をして診ている項目として「皮膚疾患の有無」をあげていた。
    3) 皮膚検診を行っている学校医のうち95%が, とくに注意をして診ている皮膚疾患としてアトピー性皮膚炎をあげていた。
    4) 内科検診時, 93%の学校医はアトピー性皮膚炎をチェックしており, 86%はアトピー性皮膚炎は健康診断でチェックされるべきであるとしている。
    5) 伝染性皮膚疾患については, 伝染性軟属腫以外チェックしている学校医は少なく, 関心はあまり高いとは言えなかった。
    6) 82%の学校医は皮膚検診は必要であるとしており, その場合2次検診も含めると66%が皮膚科専門医が行うのがよいとしていた。また, 54%の学校医は, 検診は「全児童」に行うのが望ましいとしていた。
    以上の調査結果より皮膚科医による皮膚検診, 学校医, 養護教諭への啓蒙など学校保健への参加が必要であると思われた。
  • —CIE基準(試案)による検討—
    川田 暁, 野田 俊明, 山崎 正視, 比留間 政太郎, 石橋 明
    1991 年 53 巻 5 号 p. 989-994
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    2種のサンスクリーン剤, エクラン·トタル·オパックECRAN TOTAL OPAQUE®(以下ETOと略す)(RoC S. A., France)と, エクラン·トタル·オパック·アンコロレécran total opaque incolore(15+ A+B)®(以下15+と略す)(RoC S. A., France)について, CIE基準(試案)を用いてそれらの紫外線防御効果を検討し, SPFを算定した。さらにsandwich法による波長別透過率を測定し, ETOについてデルマレイM-DMR-1型のS·Eランプに対するSPFを検討した。対象は健康人男子20名で, 被験試料はすべて塗布量2mg/cm2とした。CIE基準(試案)によるSPF値は両試料とも14.8から47.3であった。SPF値の幾何平均の概算値はETOが29.5, 15+が24.5であった。またETOのS·Eランプに対するSPF値は37.7以上であった。以上, ETO, 15+のSPFはメーカーの表示したSPFよりも高値を示した。またCIE基準(試案)とS·EランプによるSPFは大きく異なった。
  • —屋外実験による検討—
    野田 俊明, 川田 暁, 山崎 正視, 比留間 政太郎, 石橋 明
    1991 年 53 巻 5 号 p. 995-1000
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    外用サンスクリーン剤の紫外線防御効果を検討するため, 健康成人男子12名を対象に屋外実験を行った。試料: ECRAN TOTAL INVISIBLE®(ETI), écran total opaque 15+A+B®(15+)(いずれもRoC社製)。塗布量: 2mg/cm2。塗布部位: 背部の非露光部位。5月の埼玉県所沢市における自然光により, サンスクリーン剤塗布部位の最少紅斑量(MED)と非塗布部位のMEDを24時間後に判定しsun protection factor(SPF)を算定した。その結果, SPFは15+が6.6以上, ETIが3.6以上であった。屋外実験によるSPFの正確な算定は困難と思われたが, 両剤とも紫外線紅斑の抑制効果は十分でありその優れた実用性が示された。また同時にUVセンサー(東レ製)で紫外線の強度と積算値を測定しその実用性を検討した。
  • 高橋 雅弘, 幸田 弘
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1001-1006
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    4例の脂肪腫のMRI所見について報告した。脂肪腫のMRI所見はT1-weighted imageでhyperintensity, T2-weighted imageでintermediate∼hyperintensity, ShortTI IRで著明なhypointensityと特徴的な信号強度を呈した。加えて, 各画像での腫瘍と正常皮下脂肪織の信号強度の比較を行うことにより, 画像から脂肪腫の診断が可能である。
講座
統計
  • —帯状疱疹後神経痛について—
    飯田 真由美, 古田 剛, 深谷 元継, 長谷川 順一, 岩瀬 悦子, 松田 俊樹, 安積 輝夫
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1012-1022
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    昭和62年9月∼昭和63年11月までの期間に当科を受診した帯状疱疹患者は106人であった。罹患後1年以上経った時点での帯状疱疹後神経痛の有無について, アンケート調査を実施した。回答が得られた93人中罹患後2週間以内に受診した85人について検討し次の結果を得た。
    (1) 1年以上経過した時点での帯状疱疹後神経痛の完治率は89.4%で, 治療を要しない略治者を加えた完治略治率は96.5%で, 残りの3.5%が要治療者であった。
    (2) 高齢者ほど, また皮疹重症例ほど完治略治率は低い傾向を認めたがχ2検定で有意差はなかった。
    (3) 抗ウイルス剤使用例においては発病4日以内に使用した症例の完治略治率は, アシクロビル例, ビダラビン例ともに100%で, 発病5日以後使用症例の完治略治率は, アシクロビル例で94.3%, ビダラビン例は100%であった。なおアシクロビル4日以内使用者と5日以後使用者の残存率にχ2検定で有意差(p<0.05)があった。
    (4) Post-herpetic neuralgia(PHN)の長期残存率 (6ヵ月以上) をみると神経ブロックは, たとえ早期に実施しても非実施の最近の報告例と比較して, 必ずしも有効でないことを論及した。
治療
  • MT-861研究班
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1023-1032
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    新抗真菌薬MT-861(amorolfine hydrochloride)の臨床使用上の至適用量(至適濃度)を検索する目的で, 多施設共同の研究班を結成し, MT-861 0.25%クリームと同0.5%クリームの趾間白癬および生毛部白癬(体部および股部白癬)に対する有効性と安全性を二重盲検法により検討した。真菌に対する効果では, 趾間白癬の最終判定日において, 菌陰性化率0.25%群73.3%, 0.5%群88.8%で, 0.5%群が有意に優れ, また各週別では3週, 4週で有意差が認められた。生毛部白癬では0.25%群76.8%, 0.5%群84.6%で菌陰性化率に有意差は認められなかった。最終皮膚所見総合効果では両疾患とも, 0.25%および0.5%群間に有意差は認められなかったが, 各週別では趾間白癬の2週目および生毛部白癬の1週目に有意差が認められた。総合効果では, 趾間白癬の有効率は0.25%群72.0%, 0.5%群88.8%で, 有意差(χ2)をもって0.5%群が優れていた。生毛部白癬ではいずれの検定でも有意差は認められなかった。副作用の発生率は0.25%群4.3%, 0.5%群1.2%と0.5%群に低い傾向がみられたが, 有意差は認められなかった。以上の結果から, MT-861クリームは0.5%濃度のものが, 臨床使用上最も適していると考えられた。
  • テルビナフィンクリームパイロット試験研究班
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1033-1037
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    生毛部白癬を主な対象疾患として, terbinafine 1%クリームの1日1回塗布による有効性, 安全性および有用性につき, 7施設による共同研究を行った。生毛部白癬22例について, 菌陰性化率, 皮膚所見の改善率, 総合効果の有効率および有用率はすべて90.9%であった。足白癬11例についての結果は参考とするに止めたが, 菌陰性化率81.8%, 皮膚所見の改善率100%, 総合効果の有効率, 有用率はともに81.8%であった。副作用は全33例中1例も認められなかった。以上より, 生毛部白癬に対するterbinafine 1%クリーム1日1回塗布による有効性, 安全性および有用性は, 1日2回塗布によるそれと同等であると考えられた。
  • 大畑 恵之, 陳 科栄, 櫻井 美佐, 久米井 晃子, 中山 秀夫
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1038-1042
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    アリルアミン系の新しい抗真菌剤である, terbinafine(治験コードSF 86-327)の光毒性, 光感作性に関する試験をpatch test, photopatch testにより, 健常人volunteer(予備試験3名, 本試験24名)を対象に実施した。試験薬剤は1% terbinafine creamであり, 対照として同cream base, 白色ワセリン, 1% bifonazole cream, 1% econazole cream, 2% tolnaftate ointmentの4薬剤およびブランクを用い, 反応を2週間まで観察した。Patch testおよびphotopatch testにおいて, ICDRG基準による(+)以上の陽性反応はすべての試験薬剤について認められなかった。1% econazole creamをはじめとして, ブランク, 1% terbinafine cream, 1% bifonazole cream, 白色ワセリンに26時間後, 48時間後において, 弱陽性反応が認められる例もあったが, これらは汗疹の合併と思われた。以上の結果から, 1% terbinafine creamは, 同時にtestした他の試験薬剤と同様に光毒性, 光感作性を有さないと考えられた。
  • 中山 秀夫, 禾 紀子, 松尾 閑乃, 杉 俊之, 鶴町 和道
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1043-1053
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    新しい抗真菌剤terbinafine(治験code名SF 86-327)の臨床評価に先立ち, 本剤が盛夏に蒸れて2日間閉鎖された状態で皮膚についても, 刺激が起こらないかどうかを健常人volunteer 20名の協力で, Finn chamberを用いたclosed patch test法により検討した。その結果, 3, 2, 1%クリームの条件で, terbinafineはとくに刺激はないと考えられた。貼付2週間後にも, spontaneous flare upはみられなかった。血清化学の検査では正常値をこえる明らかな異常は生じなかった。
  • 北村 忠兵衛, 金子 修, 竹島 真徳, 阿部 稔彦
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1054-1060
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    Bifonazole 1%クリーム剤および液剤を用い, 浅在性白癬患者を対象に一般臨床試験を実施した。有効性解析対象64例(クリーム剤33例, 液剤31例)における, 最終観察日(足白癬では試験開始4週後, 股部および体部白癬では2週後)の治療効果をみると, 真菌学的効果はクリーム剤で100%, 液剤で96.8%の菌陰性化率, 皮膚症状改善度は両剤型ともに100%の改善率, さらに総合臨床効果ではクリーム剤100%, 液剤96.8%の有効率であった。安全性解析対象は68例で, 副作用所見は何ら認められなかった。また臨床検査を試験開始前·後に実施した12例ともいずれの検査項目にも異常変動はみられなかった。有用性解析対象64例(クリーム剤33例, 液剤31例)における本剤の有用性評価は, クリーム剤100%, 液剤96.8%の有用率であった。最終観察日に被験者より調査した本剤塗擦部の使用感は, 両剤型ともに全例が「良好」以上との判定であった。以上の成績より, bifonazoleはクリーム剤, 液剤ともに浅在性皮膚白癬に優れた治療効果を示しかつ高い安全性を有することが確認された。
  • 本房 昭三, 安元 慎一郎, 桐生 美麿, 占部 和敬, 堀 嘉昭, 占部 治邦, 矢幡 敬, 和田 恭子, 佐藤 恵実子
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1061-1065
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    イミダゾール系抗真菌剤bifonazole 1%含有クリームの1日1回塗布による白癬(足白癬, 股部白癬, 体部白癬)に対する有用性をopen trialで検討した。有効率は, 足白癬61.9%(13/21例), 股部白癬87.5%(7/8例), 体部白癬100%(11/11例)であった。副作用は42例中2例(4.8%)にみられたが, いずれの症状もステロイド外用剤などの使用により速やかに消失した。有効性に安全性を加味した有用率は, 足白癬61.9%, 股部白癬87.5%, 体部白癬100%であった。以上の成績から, bifonazole 1%含有クリームは白癬に対し有用な薬剤であると考えられる。
  • 西本 勝太郎, 柴原 美保子
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1066-1071
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    長崎市内の7施設において, 患者のセルフメディケーションの対象となると考えられる比較的軽症の足白癬34例(趾間型21例, 小水疱型13例), 股部白癬10例, 体部白癬19例につき, bifonazole 1%クリーム1日1回単純塗擦による治療を行い, その有効性, 安全性, 有用性を検討した。真菌学的効果および皮膚症状改善度を勘案した総合臨床効果については, 足白癬75.9%(22/29例), 股部白癬100%(10/10例), 体部白癬100%(16/16例)の有効率であった。本剤投与に起因すると思われる副作用および臨床検査値の異常変動は1例にもみられなかった。有用率は足白癬82.8%(24/29例), 股部白癬100%(10/10例), 体部白癬100%(16/16例)であった。以上より, 本剤は白癬治療における一般用医薬品としても有用であるものと考えた。
  • 金蔵 拓郎, 田代 正昭
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1072-1079
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    Bifonazole 1%クリームおよび1%液の比較的軽症の白癬を対象とした一般臨床試験を実施した。有効性解析対象例45例(クリーム剤29例, 液剤16例)の最終観察日(足白癬4週後, 股部白癬, 体部白癬2週後)における真菌学的効果は, クリーム剤で93.1%, 液剤で87.5%の陰性化率を示した。皮膚症状改善度は両剤型ともに100%の改善率を示した。また真菌学的効果と皮膚症状改善度を勘案した総合臨床効果はそれぞれクリーム剤93.1%, 液剤87.5%と高い有効率を示した。安全性解析対象例48例(クリーム29例, 液剤19例)において, 自他覚的副作用所見は何ら認められず, また臨床検査値の異常変動についても本剤に起因すると考えられるものは認められなかった。有用性解析対象例45例(クリーム剤29例, 液剤16例)における有用率は, クリーム剤で93.1%, 液剤で93.8%を示した。なお被験者より調査した本剤塗擦部の使用感については, 48例(クリーム剤29例, 液剤19例)中きわめて良好ないし良好と判定された症例がクリーム剤で100%, 液剤で94.7%であった。今回われわれが実施した臨床試験成績からも, 本剤が白癬治療に有用であることが確認された。
  • 永江 祥之介, 桐生 美麿, 堀 嘉昭
    1991 年 53 巻 5 号 p. 1080-1086
    発行日: 1991/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    皮脂欠乏性湿疹71例に非ステロイド系消炎·鎮痛外用剤トパルジック®軟膏を投与し, その臨床効果を検討した。皮膚所見のスコア変化および改善率の推移から, 2週以後安定した臨床効果が得られた。また, 投与1週後の所見ではそう痒, 落屑, 皮膚乾燥などの所見で著明な効果が認められた。改善以上の改善率は73.2%, やや改善以上では91.5%であった。副作用発現症例は2例(2.8%)で塗布部位に皮膚刺激症状が認められたが可逆性のものであった。
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