西日本皮膚科
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症例
水疱性類天疱瘡に対するシクロスポリン·プレドニゾロン併用療法中に発症した糖尿病
川内 康弘額賀 祐美星野 稔岩田 充大塚 藤男
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ジャーナル 認証あり

1995 年 57 巻 2 号 p. 247-250

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抄録
シクロスポリンは皮膚科領域では乾癬に保険適用されているほか, 天疱瘡, 類天疱瘡などの水疱症に対してもプレドニゾロンと併用投与することにより優れた臨床効果が認められている。その副作用として重要なものは腎障害, 肝障害, 高血圧などであるが, シクロスポリンが重篤な耐糖能障害を引き起こし得ることは皮膚科領域においては意外に知られていない。今回われわれはプレドニゾロン大量単独投与(1mg/kg/day)に抵抗した水疱性類天疱瘡に対してシクロスポリンを併用投与(5mg/kg/day)し, 併用開始後10日目から急激な血糖値の上昇をきたした症例を経験した。同時期のシクロスポリン血中トラフレベルは669ng/mlと異常高値であり, また尿中C-ペプチド排泄量は低値を示し, 本症例における糖尿病の発症はステロイド糖尿病ではなく, シクロスポリンのラ氏島β細胞障害により引き起こされたと推測した。シクロスポリンによる糖尿病は, 不可逆性のインスリン依存性糖尿病となる可能性が高く, とくにステロイドとシクロスポリンを併用投与するさいには血糖値, 尿糖値の注意深い観察が必要と考えた。
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© 1995 日本皮膚科学会西部支部
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