1999 年 61 巻 4 号 p. 467-470
短期間に原発巣の自然消退を呈した悪性黒色腫の64歳女性例を報告した。右鼠径部の皮下腫瘤が悪性黒色腫のリンパ節転移と判明し, 腫瘍全摘出術及び所属リンパ節廓清術を施行した。所属リンパ節領域の右拇趾々腹部に色素斑を認めた他は, どこにも原発巣を疑わせるような腫瘍·色素沈着·脱色素斑は認められなかった。この色素斑の病理組織像は真皮メラノファージが主体であったが, 初診後漸次褪色傾向を示し, 2ヵ月後には完全に消失した。以上から, 右拇趾々腹部色素斑が原発巣であった悪性黒色腫pT0N1M0, stage IIIと診断した。初診後1年10ヵ月, 臨床的にも検査上も再発や転移は認められていない。