西日本皮膚科
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61 巻, 4 号
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図説
綜説
症例
  • 田尻 美保, 山元 修, 末永 義則, 旭 正一
    1999 年 61 巻 4 号 p. 426-429
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
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    67歳の男性。初診の約1年前から両下腿に貨幣状湿疹様の皮疹が出現した。近医にて加療されたが難治のため, 昭和63年10月17日当科を紹介され受診した。外来でステロイド内服, 外用などの治療をしていたが, 2年後に紅皮症状態となり平成3年1月7日当科入院となった。入院時, 胃部不快感を訴えたため上部消化管造影を施行し, 食道小細胞癌が発見された。体部CTにて肝転移が認められたため外科的治療の適応はないと考え, 化学療法·放射線療法を施行し, 一時的に紅皮症の軽快が見られた。治療の継続のため転院したが, イレウスとDICを併発し, 転院の1ヵ月後に死亡した。食道小細胞癌は稀な癌であり, 紅皮症の合併も非常に稀であると思われた。
  • 新田 政博, 阿部 真也, 石崎 宏
    1999 年 61 巻 4 号 p. 430-434
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    9歳および8歳女児に生じたpityriasis lichenoides et varioliformis acutaの2例を報告した。症例1では抗生物質の内服とステロイド剤の外用を11週間, 症例2では週1回のUVB照射とステロイド剤の外用を7週間行ったが皮疹は軽快しなかった。両症例には習慣性扁桃炎の既往があり, 耳鼻科的に慢性扁桃炎と診断された。皮疹は扁桃摘出後4週間で色素沈着あるいは脱色素斑を残し消退した。症例1では扁摘1年8ヵ月後の現在, 少数の皮疹の新生をみとめ, 症例2では扁摘6ヵ月後の現在, 皮疹の再燃をみとめない。
  • 満間 照之, 柴山 久代, 近藤 隆男, 原 一夫
    1999 年 61 巻 4 号 p. 435-437
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    心臓カテーテル操作後にコレステロール結晶塞栓症(CCE)を起こし皮膚生検にて確定診断が得られた2例を報告する。皮疹は足底または足趾の紫斑で, 同部位より皮膚生検を行い血管内にcholesterol cleftを認めた。症例1では腎生検にても同様の所見が得られ, また検査所見より腎機能障害も認められた。CCEは皮膚生検などによる病理組織像が診断の決め手になり, 同疾患を念頭に置いて生検をすることが重要である。
  • 前川 和代, 浜田 祐子, 丸野 元美, 野中 薫雄, 長嶺 文雄, 高須 信行
    1999 年 61 巻 4 号 p. 438-442
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は35歳の女性。両手指の循環障害およびRaynaud現象を主訴に来院した。血液検査で, 抗RNP抗体陽性, 白血球減少, 血小板減少などを認め, 混合性結合組織病(以下MCTD)と診断した。さらに胸部単純X線検査にて心胸郭比(cardio-thoracic ratio, 以下CTR)が63%と拡大し, 心エコー上肺動脈圧が57.3mmHg(正常値17∼32mmHg)であったことから肺高血圧症を伴っていることが判明した。また, 明らかに肺高血圧症の原因と思われる基礎疾患はMCTD以外認められなかった。肺高血圧症の治療法は対症療法が中心であり, 突然死もありうる予後の悪い疾患である。肺高血圧症を伴ったMCTDの場合, 肺高血圧症が診断されてから死亡までの平均生存期間は4.2年といわれ, さらにMCTDの死因の第1位は肺高血圧症である。MCTDはその性格上皮膚科を初診しfollowされる症例もあり, 生命予後に関わる合併症の存在を知ることは, 我々皮膚科医にとっても非常に重要であると思われた。
  • 渡辺 秀晃, 永田 茂樹, 西尾 和倫, 角地 智加子, 末木 博彦, 飯島 正文, 橋本 隆
    1999 年 61 巻 4 号 p. 443-447
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    46歳の男性。昭和大学医学部附属病院皮膚科初診約1ヵ月前より足底·趾間に紅斑·小水疱が出現し, 漸次, 躯幹·四肢に拡大した。13日前に当科関連病院を受診し, iris lesionを伴うことからerythema exsudativum multiforme bullosumを疑診されプレドニゾロン(prednisolone: PSL)0.75∼1.4mg/kg/dayの投与を受けていたが軽快せず当科へ転院した。転院時ほぼ全身に浮腫性紅斑および大小種々の緊満性水疱·びらんが多発していた。末梢血好酸球数は14500/μlであった。水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid: BP)を疑い生検した。病理組織学的に表皮下水疱を認め, 真皮上·中層にリンパ球, 好酸球を主体とした細胞浸潤がみられた。蛍光抗体直接法で表皮·真皮境界部にIgG, C3が線状に沈着, 免疫ブロット法で180kD, 230kDのBP抗原と反応し, BPと診断した。PSL 1mg/kg/day 10日間の投与で水疱の新生が続くためアザチオプリン150mg/dayを併用し著効したが骨髄抑制を生じ, シクロスポリン4mg/kg/dayに変更し1ヵ月間投与してPSLを漸減。20ヵ月後の現在もPSL 0.25mg/kg/dayを内服し外来通院中である。本症例は発熱を伴って紅斑·水疱が急速に全身に拡大·融合し紅皮症様を呈したことよりerythrodermic BPの範疇に含まれる症例と考えられた。
  • 大村 明子, 小笠原 弓恵, 濱本 嘉昭, 武藤 正彦
    1999 年 61 巻 4 号 p. 448-450
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    48歳の女性に生じたエチゾラム(デパス®)による多形紅斑型薬疹の1例について報告した。内服開始から発症までの期間は49日であった。臨床的には両下腿および両前腕に空豆大から鳩卵大までの同心円状, 一部連圏状を呈するそう痒を伴わない紫紅色斑が散在して認められた。病理組織学的には真皮上層の血管周囲性にリンパ球の浸潤を認め, 表皮内走入も伴っていた。原因薬剤の中止と抗アレルギー剤の内服で皮疹は速やかに消退した。エチゾラムの内服テストは陽性であった。
  • 松下 明子, 比留間 政太郎, 小川 秀興, 渡邊 修一, 佐伯 敬子
    1999 年 61 巻 4 号 p. 451-454
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    37歳の女性。ペニシラミン内服中の全身性強皮症患者に併発した蛇行性穿孔性弾性線維症(EPS)の1例を報告した。現症は項部に丘疹が蛇行状に配列し, 一部は環状を呈する。病理組織学的に変性した弾性線維が経表皮的に排出されている像を認め本症と診断した。これまでにわが国におけるEPSの報告例は83例あり, その多くは弾性線維性仮性黄色腫およびペニシラミン内服中のWilson病患者が主であり, ペニシラミンを内服した全身性強皮症の患者の症例ははじめてである。
  • 谷 暁子, 武田 浩一郎, 吉井 典子, 三好 逸男, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1999 年 61 巻 4 号 p. 455-457
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    59歳の男性。1998年1月頃より露光部を中心に全身の色素沈着に気づいたため, 1998年6月23日に当科紹介受診。病理組織学的検査にて基底層にメラニン色素の著明な増加がみられた。入院の上, 精査を行ったところ, 血中ACTHの軽度上昇, 血中コルチゾールは軽度低下を認めた。また, 血中アンドロステンジオンと尿中フリーコルチゾールは低値を示し, 副腎皮質シンチグラフィーにて両側副腎の描出が不良であった。これらの結果より, 部分的Addison病と診断した。原因については明らかなものが検索されなかったため, 特発性のものと考えた。
  • 山内 律子, 森田 明理, 辻 卓夫
    1999 年 61 巻 4 号 p. 458-462
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    C型肝炎の経過中にクリオグロブリン血症によると考えられる痒疹をきたした60歳の男性を報告した。クリオグロブリン血症の皮膚症状は多彩である。自験例では網状皮斑と難治性の痒疹が認められた。血清検査上, リウマトイド因子陽性, 低補体血症(CH50の低下), クリオグロブリン陽性, およびC型肝炎ウイルス抗体価陽性が認められた。免疫電気泳動ではIgMκ型-IgG(polyclonal)の混合型クリオグロブリン(type IIクリオグロブリン)が同定された。また痒疹部の酵素抗体法にて真皮上層部の血管周囲にIgGとIgMの沈着が認められた。以上の結果より, C型肝炎ウイルスの感染によって生じたクリオグロブリン血症と痒疹の間に何らかの関与が示唆された。
  • 森村 司, 三原 基之
    1999 年 61 巻 4 号 p. 463-466
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    58歳の男性。左上腕の腫瘤を主訴に受診した。病理組織学的に粘液産生癌で, 多数の印環細胞を認めた。精査により下行結腸に大腸癌がみつかった。大腸癌には病理組織学的に多数の印環細胞が認められ, 皮膚の腫瘤と同じ病理組織像であった。大腸原発の印環細胞癌が皮膚に転移した稀な1例であった。
  • 石川 博康, 熊谷 恒良, 小川 俊一, 小山内 俊久
    1999 年 61 巻 4 号 p. 467-470
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    短期間に原発巣の自然消退を呈した悪性黒色腫の64歳女性例を報告した。右鼠径部の皮下腫瘤が悪性黒色腫のリンパ節転移と判明し, 腫瘍全摘出術及び所属リンパ節廓清術を施行した。所属リンパ節領域の右拇趾々腹部に色素斑を認めた他は, どこにも原発巣を疑わせるような腫瘍·色素沈着·脱色素斑は認められなかった。この色素斑の病理組織像は真皮メラノファージが主体であったが, 初診後漸次褪色傾向を示し, 2ヵ月後には完全に消失した。以上から, 右拇趾々腹部色素斑が原発巣であった悪性黒色腫pT0N1M0, stage IIIと診断した。初診後1年10ヵ月, 臨床的にも検査上も再発や転移は認められていない。
  • 板倉 英潤, 永江 祥之介, 今山 修平, 古江 増隆
    1999 年 61 巻 4 号 p. 471-473
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    CD34陽性細胞を認めたfibrous papule of the noseの1例を報告した。臨床的には約10年間の経過で次第に隆起した孤立性の暗赤色丘疹であり, 病理組織学的には毛嚢周囲のみならず真皮全層の好酸性線維の増生と,紡錘形または樹状細胞の増加, および拡張した小血管の増生を認めた。免疫組織化学的には, 紡錘形または樹状細胞の多くはfactor XIIIa陽性であったが, それとは別にCD34陽性の紡錘形または樹状細胞も多数認めた。また腫瘍組織の深い領域にはCD34陽性細胞を多数認めた。
  • 具志 亮, 神崎 保
    1999 年 61 巻 4 号 p. 474-477
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    81歳の女性。1995年8月に近医で左手背の疣状結節を切除。その後放置していたが, 左腋窩の皮下腫瘤の増大傾向を認め, 1997年4月当科受診。初診時, 左腋窩に10×8cmの皮下腫瘤を認めた。また入院後, 全身検索にて左肺野に3×3cmのcoin lesionを認めた。治療は左腋窩, 肺病変とも外科的に切除した。病理組織学的に左手背, 腋窩, 肺病変を検討したところ, いずれの組織もtrichilemmal carcinomaの像と思われ, 左手背原発, 同側の腋窩及び肺転移と考えた。
  • 辻野 佳雄, 出来尾 哲
    1999 年 61 巻 4 号 p. 478-480
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    患者は83歳の女性。頭頂部皮膚に紅色結節を生じて受診した。1年8ヵ月前に結腸癌の手術を受けており, 当科受診直前に結腸癌の肺転移と思われる病変が証明されていた。全摘後の病理組織学的所見より, 頭頂部皮膚の紅色結節は結腸癌の皮膚転移と考えられた。臨床経過などより自験例を結腸癌の肺転移を介しての頭部への転移と考えた。
  • 森本 謙一, 古谷 喜義, 坪井 賢朗, 西阪 隆
    1999 年 61 巻 4 号 p. 481-484
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    35歳の女性。約1年前に左大陰唇の軽度の浸潤に気付き, その後徐々に増大した。初診時, 鳩卵大の懸垂性に隆起した境界明瞭, 硬度軟な皮下腫瘤を認めた。腫瘤はMRI T1強調像にて低信号, T2強調像にて高信号を呈した。Gd-DTPAによる造影では, 造影剤静注8∼17分後, 腫瘍内部に淡い造影効果を認めた。病理組織学的に真皮から皮下組織にかけて薄い被膜をもつ粘液に富む腫瘍を認め, 紡錘形, 卵円形, 星芒状の腫瘍細胞が疎に増生していた。免疫組織化学的に腫瘍細胞はvimentin, desminに陽性で, α-smooth muscle actinに陰性を示した。以上よりangiomyofibroblastomaと診断した。切除後22ヵ月の現在, 再発は認められていない。
  • 新見 直正
    1999 年 61 巻 4 号 p. 485-487
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    Acquired digital fibrokeratomaの2例を報告した。症例1は69歳男性で, 5年ほど前に特に誘因なく右拇指に粟粒大の紅色丘疹が出現。丘疹は徐々に指状に増大してきた。症例2は52歳女性で, 2年ほど前に右環指爪部に特に誘因なく粟粒大の紅色丘疹が出現した。丘疹は水平方向に指状に徐々に増大し, 爪の変形を伴うようになった。腫瘍は一部尺側で爪甲下に存在し, 正中部では爪は栄養障害性の変化を示すというユニークな臨床像を呈しており, 爪母下真皮より上方に正中に向かって増殖したと考えられた。病理組織学的にはいずれも過角化, 表皮肥厚, 膠原線維の増生と毛細血管の拡張が見られた。
  • 小幡 千景, 幸田 太, 桐生 美麿
    1999 年 61 巻 4 号 p. 488-490
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は21歳の女性。初診の約5年前に右第2指腹の膨隆に気付くが放置していた。次第に増大してきたため, 手術目的で北九州市立医療センター皮膚科を受診した。局麻下で摘出した境界明瞭な皮下腫瘤は, 弾性軟で肉眼的には黄色調, 双角状であった。病理組織学的には, 成熟脂肪細胞が線維成分を伴って増殖しており, 脂肪腫の一型であるfibrolipomaに合致する像を示した。
  • 石川 博康, 熊谷 恒良, 小川 俊一, 安孫子 正美, 長澤 正樹
    1999 年 61 巻 4 号 p. 491-495
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    72歳の男性。20歳時肺結核, 24歳時に腰椎カリエス, 回盲部結核の既往あり。2ヵ月前より右胸肋部に圧痛を伴う腫脹が出現し, 初診時には鶏卵大の皮下腫瘤を形成していた。ツ反中等度陽性, 膿瘍穿刺液からガフキー1号, 結核菌培養陽性, 胸部X線像及びCT所見より胸囲結核と診断。INH 300mg/日, RFP 450mg/日, EB 750mg/日の内服を6ヵ月間行ったところ膿瘍は著明に縮小した。胸囲結核の報告は全科で年間数例と比較的稀であるが, 1975年以降1998年までの皮膚科·形成外科領域からの報告14例につき統計的観察を行った。また, 胸壁の結核性膿瘍は胸腔内病巣との連続性により分類も治療も異なるため, 他科との連携も考慮し, 「胸囲結核」の病名で統一した方が良いのではないかと考えた。
  • 黒木 りえ, 浦 弘志, 桐生 美麿, 古江 増隆
    1999 年 61 巻 4 号 p. 496-498
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    熱帯魚飼育を趣味とする47歳の男性。1997年12月初旬に左第5指爪囲に切創を生じ, その後創周囲が発赤, 腫脹。抗生剤内服で加療されたが, 左手背から前腕にかけて圧痛を伴う結節が多発してきたため, 1998年1月5日当科初診。左前腕の結節の生検組織では, 真皮から皮下脂肪組織にかけて膿瘍形成と主に類上皮細胞とリンパ球より成る肉芽腫性病変を認めた。組織のPAS染色, Ziehl-Neelsen染色ではともに菌要素を認めなかった。膿および組織片を28℃で2週間培養した2%変法小川培地に黄白色のS型集落形成。分離菌に対するDNA-DNA hybridization法や抗酸菌鑑別の各試験の結果より原因菌をMycobacterium marinumと同定。薬剤感受性試験ではスパルフロキサシンに強い感受性を示した。ミノサイタリン200mg/dayの9週間内服とスパルフロキサシン200mg/dayの5週間内服後, 多発性結節は縮小し, 萎縮性瘢痕を認めるのみとなった。
  • 中村 泰大, 小笠原 理雄, 里見 久恵, 立石 毅, 藤沢 裕志, 大塚 藤男, 飯島 茂子
    1999 年 61 巻 4 号 p. 499-501
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    6ヵ月の女児に発症したスポロトリコーシス。生後3ヵ月時に左頬部に排膿を伴う虫刺症様の結節が生じ, 副腎皮質ホルモン軟膏の外用, 抗生物質の内服および外用療法を受けたが治癒しなかった。同部位の皮膚生検の結果, 真皮内にPAS染色陽性の菌要素を認めた。また生検組織片よりSporothrix schenckiiを分離し, 本症をスポロトリコーシスと診断した。使い捨てカイロによる局所温熱療法を開始した。治療開始後15ヵ月経過した現在, 瘢痕を残し治癒し, 再発を認めない。本邦におけるスポロトリコーシスの最年少は生後3ヵ月であったが本例も極めて早い時期の感染であると考えた。
講座
  • 成澤 寛
    1999 年 61 巻 4 号 p. 502-506
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    Friedrich Sigmund Merkelが1875年にtastzellen or touch cellとして初めて記載し, 現在も尚ベールにつつまれたメルケル細胞について本講座で取り上げ解説を加える。皮膚科学ないし病理学関連の教本において, 皮膚の構造のなかでメルケル細胞についてふれられる部分はわずかである。メルケル細胞を通常の観察でとらえることは困難であり, 更にメルケル細胞が関与する病態が皮膚科領域においてほとんど知られていないため, 皮膚科医の興味の対象となることはなかった。そのようななかでメルケル細胞を神経内分泌細胞(neuroendocrine cell)として位置付け, これらの神経内分泌細胞が皮膚において腫瘍化したもの, つまりメルケル細胞癌が見出されるようになったため, メルケル細胞という名称も皮膚科学, 病理学, 更には皮膚病理学のなかで一定の地位を占めるようになったとはいえ, その実体についてはほとんど知られていない。
治療
  • 徳島大学アンテベート協同臨床研究班
    1999 年 61 巻 4 号 p. 507-514
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    徳島大学医学部皮膚科と関連5施設で湿疹·皮膚炎群の患者30名にアンテベート®軟膏(一般名: 酪酸プロピオン酸べタメサゾン)の外用を最長4週間行い, 臨床効果と再燃抑制効果について検討した。まずアンテベート®軟膏を1∼4週間単純塗布し臨床効果を評価し(評価症例30例), この間に寛解に至った症例では, 寛解と判定した日より白色ワセリン塗布による維持療法に移行し, 皮疹の再燃がみられた時点で治験を終了した(有効評価症例数25例)。30例の全般改善度は著明改善70.0%, 改善23.3%, やや改善6.7%であった。維持療法移行症例中, 10例に再燃がみられたが, 15例では再燃なしで経過した。疾患別では, 慢性湿疹が最も再燃が少なく, 約33.3%の再燃率であった。寛解導入に要したアンテベート®軟膏の投与期間は, 再燃あり群では平均18.8日, 再燃なし群では平均21.1日であった。再燃なし群では, 白色ワセリンに切り替えた後, 平均26.1日で再燃したが, 再燃あり群は平均14.2日で再燃し, そう痒が再燃の良い指標となった。慢性の湿疹·皮膚炎群では約3週間外用すれば, 以後は白色ワセリンのみでも約2週間は再燃がなく, 半数以上の例では約4週間再燃がなかった。中等症までの湿疹·皮膚炎群ではアンテベート®軟膏で皮疹の寛解が縛られた後, 白色ワセリンのみでもかなりの期間再燃が抑制されうる事が判明した。
  • 塚本 克彦, 柴垣 直孝, 齋藤 敦, 長田 厚, 北村 玲子, 今井 佳代子, 樋泉 和子, 島田 眞路
    1999 年 61 巻 4 号 p. 515-519
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    ユーカリエキスを配合した入浴剤のアトピー性皮膚炎に対する有用性を検討するために, セラミド誘導体などの油性保湿剤を配合した入浴剤を対照とし, これにユーカリエキスを配合した入浴剤を用いて臨床試験を行った。対象はアトピー性皮膚炎患者31例(ユーカリエキス配合入浴剤使用群15例, 対照入浴剤使用群16例)で, 入浴剤を4週間使用してもらい, 2週間毎に診察した。その結果, 1. 皮膚所見に関しては, 「そう痒」, 「紅斑」, 「落屑」において両群とも有意な改善が認められたが, 両群間に有意差は認めなかった。2. 「全般改善度」, 「有用性」に関しては, ユーカリエキス配合入浴剤使用群の方が対照入浴剤使用群に比し優れた傾向が認められた。特に, 入浴剤を20回以上使用した患者においては, 「有用性」に関して, ユーカリエキス配合入浴剤使用群(13例)の方が対照入浴剤使用群(12例)に比し有意に優れていた。以上の結果より, ユーカリエキスを配合した入浴剤の使用は, アトピー性皮膚炎の治療において一つの有用な補助療法となる可能性が示唆された。
  • 五味 博子, 松尾 聿朗, 栗村 理恵, 石崎 純子, 原田 敬之
    1999 年 61 巻 4 号 p. 520-524
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    アトピコ®ウォーターローションは精製ツバキ油を微細に分散し配合したローションタイプの全身用保湿製剤である。乾燥性皮膚疾患患者を対象とした4週間にわたるオープン試験を行い, その安全性と有用性の検討を行った。乾燥, 鱗屑, 潮紅, 掻破痕, そう痒の全ての皮膚症状において使用前と比べ, 必須観察日である2週目, 4週目ともに有意な改善が認められた(p<0.01)。各症状別の1段階以上の改善率は乾燥94.3%, 鱗屑94.3%, 潮紅57.1%, 掻破痕68.6%, そう痒68.6%であった。使用前症状がなかった症例数を除いた改善率は乾燥94.3%, 鱗屑94.3%, 潮紅76.9%, 掻破痕77.4%, そう痒70.6%であった。乾燥, 鱗屑では2段階以上の改善率が高かった。副作用は全症例について1例も認められなかった。有用性は有用以上が94.3%, やや有用以上が100%であり, すべての症例に有用性が認められた。以上のことから, アトピコ®ウォーターローションは乾燥性皮膚疾患患者の日常のスキンケアに安全かつ有用に使用できる製剤であると考えられた。
  • 千葉 紀子, 工藤 由美子, 水戸部 知代, 橋爪 鈴男, 後藤 隆子, 広沢 麗子, 松岡 晃弘, 今泉 明子, 上西 香子
    1999 年 61 巻 4 号 p. 525-532
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    低刺激性スキンケア製品であるセイセイ®スキンケア(フェイス用: ソープ, ローション, オイル, クリーム及びパウダーの5品目)は主として成人の皮膚疾患患者を対象として, 主成分である精製ツバキ油が皮膚の乾燥及び過酸化脂質の生成に対する抑制作用と紫外線吸収作用を持ち合わせるという特性を生かして開発された製品群である。湿疹, 乾皮症, アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患患者を対象に, まずパッチテストによる安全性の確認を行ったところ, アレルギー反応が疑われる症例は認められず, 使用可能と判断された。安全性を確認後に4週間の使用試験を実施した。ソープで洗顔し, ローションを使用, その後オイルもしくはクリームを被験者の希望により選択して塗布し, 安全性と有用性を検討した。その結果, 乾燥, 落屑·粃糠, 潮紅, そう痒の皮膚症状に改善がみられた。これまで行っていた治療薬は全て変えずそのまま使用した。全般改善度は週毎に軽快し, 3週目でやや軽快以上の改善率は72.7%であった。副作用は, ざ瘡が急に出現し使用を中止した症例が1例, 試験製剤との因果関係は不明だが皮疹が増悪し治療を要したが本製品は継続使用し特に乾燥部位には有用だった1例があった。有用性の評価はやや有用以上は32例中24例75.0%だった。以上の結果からセイセイ®スキンケアは皮膚疾患患者や敏感肌に使用可能な低刺激性スキンケア製品であると判断することができた。
  • 大屋 尚之, 井坂 水奈子, 原山 純子
    1999 年 61 巻 4 号 p. 533-537
    発行日: 1999/08/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    尋常性ざ瘡の患者男女28例を対象に, 大豆エキス, オウバクエキス含有で優れた洗浄力を有するユースキン®ルドー薬用アクネウォッシュ及び皮脂過剰分泌を抑制し, 保湿性が高いユースキン®ルドー薬用アクネローションを併用させ, 安全性と有効性を評価した。その結果, 全試験終了時において, 著しく改善5例(18%), かなり改善11例(39%), やや改善12例(43%)であった。又, アトピー性皮膚炎を伴う患者に対しても副作用は1例も認められなかった事より, 安全性の高い有効な製品であることが確認された。尚, 試験終了時に実施した患者アンケートでは, べたつき75%, かさつき75.1%の改善を認め, 患者自身の高い評価が得られた。
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