抄録
症例は65歳の女性。頭部の褐色調を呈する,特に自覚症状のない結節を伴う脱毛斑を主訴に来院した。病理組織所見では,クロマチンに富む不整な核を有する細胞が真皮膠原線維間に1列に並ぶ“Indian filing”の組織像が得られ,またこれらの細胞が小型の腺管を形成し,metastatic adenocarcinomaの所見であった。既往歴として11年前に乳癌の手術を受けており,その3年後に局所再発を認め,乳癌の腫瘍マーカーの上昇などから乳癌の頭部皮膚転移によるalopecia neoplasticaと判断した。乳癌転移によるalopecia neoplasticaは典型的な臨床像とされながらも本邦報告例は少なく,文献的考察を加え報告した。