2010 年 59 巻 3 号 p. 662-664
転移性髄内腫瘍は予後の悪い稀な疾患である.今回,対麻痺にて発症し,観血的治療を行った転移性髄内肺癌の一例を経験したので報告する.62歳女性.平成20年9月左大腿部痺れ感・腰痛出現.10月下旬急速に両下肢脱力出現,起立不能となり当科入院となった.神経学的にはT10レベル以下の脊髄障害による対麻痺を呈し,MRIでT11レベルの髄内中央部に境界明瞭,T1 iso T2 iso均一に造影効果を有する腫瘍を認めた.入院後麻痺進行し両下肢完全麻痺,尿閉,に至ったため緊急手術として髄内腫瘍摘出術実施した.病理学的診断は上腺癌であった.引き続いて施行したCT検査にて右上肺野と脳内に病巣を認め,肺癌の転移と診断した.腫瘍細胞はEGFR遺伝子変異を有しておりGefitinib投与開始としたところ奏功.術後12ヶ月の時点で脊髄再発なく,外来にて経過観察中である.