2011 年 60 巻 1 号 p. 80-84
今回,私たちは頚胸椎移行部に脊椎症性脊髄症を生じた4例を経験したので報告する.症例は男3例,女1例で年齢は各々54,62,65,69歳であった.全例歩行障害を認め,MRIでC7/T1高位に脊髄の圧迫を認め,同高位でT2強調画像にて髄内高輝度を呈していた.感覚,巧緻障害,四肢腱反射および病的反射,四肢筋力について検討を行った.全例cervical line以下の感覚障害を認めたが,上肢,手指にしびれを認めなった.1例に右手巧緻障害を認めた.上肢深部腱反射は全例正常で,下肢深部腱反射は3例で亢進していた.Hoffmann反射は全例陰性,Babinski反射は2例で陽性であった.2例で右手指開排低下を認め,うち1例は右手指屈曲低下を認めた.これらの結果より歩行障害を有する患者の診断において頚胸椎移行部も考慮にいれるのが重要と思われた.