抄録
比較的稀な大腿骨頚部疲労骨折を経験した.【症例】47歳,女性.既往歴:特記事項なし.職業:介護士.誘因なく左股関節部痛を自覚した.その後,歩行も困難となり近医を受診した.単純X線像で異常は認められなかった.その後も疼痛が増強するため,1カ月後に当院を受診した.左股関節に運動時痛,圧痛を認めたが,単純X線像では左股関節関節裂隙開大を認めるのみであった.単純MRI検査にて,左大腿骨骨頭下に異常信号を認めたため,左大腿骨頚部疲労骨折と診断した.全身麻酔下に骨接合術を行い,術後6週後から部分荷重を開始し,術後8週で全荷重とした.左股関節痛は消失し,独歩で退院した.術後6カ月経過し,受傷前のADLまで回復し仕事復帰している.【考察】頚体角など解剖学的要素は異常ないため,就労による筋疲労が原因で疲労骨折が生じた可能性が高いと考えられた.成人の股関節痛の原因として本疾患についても念頭に入れておく必要があると考える.