2023 年 72 巻 2 号 p. 287-291
症例は43歳,男性.主訴は腰背部痛.HIV感染症により1年半前にAIDSを発症し抗レトロウイルス療法を施行.免疫再構築症候群である非結核性抗酸菌症による脊椎炎を合併した.運動麻痺および排尿障害が出現したため除圧固定術を施行したが骨移植を併用しなかった.疼痛が消失し独歩可能となっていたが,術後1年6か月で腰背部にボキッと音がして疼痛が再燃,X線でロッドが折損していた.ロッドのみ抜去し4ロッドに入れ替えて再度固定術を施行したが骨移植を併用しなかった.術後3年で疼痛なく独歩可能である.CTでスクリューの緩みは無いが椎体間の骨性癒合が得られていない.HIV感染症は抗レトロウイルス療法によって予後が飛躍的に改善していること,骨性癒合が得られにくいことを念頭に置き術式を検討すべきである.