整形外科と災害外科
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72 巻, 2 号
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  • 北城 圭一郎, 大久保 宏貴, 玉城 智子, 大中 敬子, 仲宗根 素子, 金城 政樹, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    60歳,女性,関節リウマチで内服治療中(MTX,PSL,DMARDs)である.現病歴は5か月前に左母指部の疼痛と外転制限を自覚し,2か月前に母指球筋部の腫脹を認めた,近医で施行されたMRIで左手掌部の軟部腫瘍が疑われ当院へ紹介された.初診時,左母指球筋部に腫瘤を触知し,母指掌側外転25°,橈側外転35°と制限を認めた.単純X線像で第一指間部に軟部陰影の増強を認めた.MRIで母指球筋深層にT1強調像で低信号,T2強調像で内部が不均一な高信号を呈する30×45 mmの腫瘤性病変を認めた.悪性軟部腫瘍などを疑って行った切開生検では,腱滑膜巨細胞腫に矛盾しない所見であったため,3か月後に掌側より切除生検術を行った.外観は被膜を有さず周囲組織との境界は不明瞭な腫瘤性病変で,可及的切除となった.免疫染色でLCA,CD20,EBER,CD30陽性でMTX関連リンパ増殖性疾患と診断され,MTX内服を中止した.術後1年,腫瘤は縮小しPET-CTで集積なく寛解が得られている.

  • 梅木 駿, 橋本 哲, 山口 雄一, 伊藤 恵理子, 田島 智徳, 浅見 昭彦
    2023 年 72 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    (目的)ばね指症例においてProximal Interphalangeal(PIP)関節の屈曲拘縮に関与する因子と関節症変化について検討する事である.(対象と方法)2017年4月から2021年3月に当院で腱鞘切開術を行った150例184指(母指を除く)を対象とし,拘縮あり群と拘縮なし群に分け,患者背景とPIP関節における関節症性変化について評価した.(結果)拘縮あり群は拘縮なし群と比べ罹病期間が有意に長く,関節症性変化を伴う割合が有意に高かった.その他の評価項目に有意差を認めなかった.また,拘縮あり群において,女性は男性と比べ屈曲拘縮角度が有意に大きかった.(考察)ばね指症例では,罹病期間が長くなるにつれてPIP関節の屈曲拘縮から関節症性変化を来す可能性が示唆された.壮年期の女性では,エストロゲンの減少に伴う滑膜炎の増悪から疼痛が躍起され屈曲拘縮の程度が強くなった可能性がある.そのため,長期罹患した壮年期の女性のばね指症例では早期に治療する必要性が考えられた.

  • 峯 博子, 井上 美帆, 荻本 晋作, 井手 衆哉, 青柳 孝彦, 可徳 三博, 鶴田 敏幸
    2023 年 72 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】今回我々は母指中手骨の亜脱臼及び母指内転変形を改善し,MP関節過伸展変形を防止するような関節形成術を考案したので報告する.【対象と方法】経過観察期間が1年以上の症例9指を対象とした.手術方法は大菱形骨を摘出し,骨孔を作製するが母指は中手骨基部の橈側から尺側に作製し,示指は通常通り作製する.移植腱のPLはsuture tapeで補強し,一方を母指の骨孔に通し,もう一方を母指中手骨背側に回し,母指・示指間で移植腱を結んで両断端を示指の骨孔に挿入し,TJ screwにて固定する.評価項目はNRS,Hand20,ピンチ力,握力,自動可動域,画像評価としてMP関節過伸展角度とTSRを術前と術後1年で調査した.【結果】NRS,MP関節過伸展角度は有意に改善した.TSRは有意に低下していた.【考察】近年,母指CM関節症術後のMP関節過伸展変形をいかに防止するかに関して議論されている.本法はMP関節の過伸展変形を防止する有用な方法の一つと考えられる.

  • 蓑川 創, 髙原 真穂, 野村 智洋, 坂本 哲哉, 小阪 英智, 柴田 陽三, 伊﨑 輝昌
    2023 年 72 巻 2 号 p. 179-182
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    距骨壊死は,距骨圧潰が進行し,可動域制限や疼痛が生じると,日常生活に支障をきたすため,手術療法を要することが多い.今回,距骨壊死に対し,外側アプローチで展開し,反転した上腕骨近位端用プレートを用いて脛踵間固定術を施行した1例を経験したので報告する.症例は81歳男性.左足関節を捻挫して受傷.近医で骨折は指摘されず,趣味の登山を継続していたが,その後徐々に左足関節痛が増悪したため,当科紹介受診となった.単純X線で距骨が高度に圧壊し,距腿関節裂隙が消失していた.脛骨天蓋の軟骨下骨に巨大な骨嚢胞もあり,骨質が不良であると判断し,脛踵間固定術を選択した.術後6週間は外固定とし,その後はPTB装具下で荷重を開始した.術後4カ月のCT検査で距腿関節の骨癒合を認め,疼痛なく歩行は可能となり,日常生活も特に問題なかった.外側腓骨骨切りアプローチは,大きな視野を獲得でき,距腿関節や距踵関節の状態を確認できる.反転した上腕骨近位端用プレートに関しては,形状的にも外側に設置しやすく,距腿関節と距踵関節の同時固定が可能である.同術式は,骨質が極めて不良な距骨壊死の症例に対して選択しうる治療法の一つと考えた.

  • 生田 拓也
    2023 年 72 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    アキレス腱陳旧性断裂に対して行った腓腹筋筋膜の一部を反転し移植腱として用いた再建術の成績を報告した.症例は12例である.男性6例,女性6例,平均年齢は59.3歳であった.受傷より当院初診までの期間は平均3.5ヶ月(1~12ヶ月)であった.術後療法は新鮮例と同様のプログラムで行った.術後6ヶ月時,患健差10度以上の可動域制限はなく,全例両足でのつま先立ちは可能であった.しかしながら,下腿三頭筋筋力については4例において正常に回復したが,他の8例においては4であり片足でのつま先立ちは困難であった.再断裂例はなかった.陳旧性アキレス腱断裂では断端が退縮して端端縫合が困難な場合が少なくない.肥厚した腓腹筋腱膜は採取が簡便であり成績も安定しており,本法はアキレス腱の再建手術として有用であると考えられた.

  • 石田 彩乃, 水城 安尋, 内村 大輝, 上田 幸輝, 伊東 孝浩, 千住 隆博, 青木 勇樹, 今井 稜
    2023 年 72 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】アキレス腱浅層断裂は稀である.今回著者らはアキレス腱付着部骨化症の裂離を伴うアキレス腱浅層断裂に対して手術加療で良好な成績を得た1例を経験したので報告する.【症例提示】75歳男性.右足が排水溝に挟まり受傷し右アキレス腱部痛を自覚.Thompson testは陰性であったが右アキレス腱付着部に圧痛を認めた.単純X線側面像でアキレス腱付着部より中枢に骨陰影を認め,超音波画像検査とMRI検査でアキレス腱の浅層のみの断裂を認めた.アキレス腱付着部骨化症裂離を伴うアキレス腱浅層断裂の診断で骨片切除とsuture bridge法での腱修復を行った.術後1年で可動域の健患差は認めず,つま先立ちは可能であるが軽度筋力低下を認めている.【考察】診断には超音波検査,MRI検査が有用であった.比較的早期の手術により一次修復が可能であり,骨片切除とsuture bridge法による腱縫合を行い良好な成績が得られた.

  • 土居 雄太
    2023 年 72 巻 2 号 p. 191-193
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    踵骨アキレス腱付着部骨折は,骨片による皮膚損傷が問題となり早期手術が必要となることが多いが,固定法に関しては未だ一定のコンセンサスはない.踵骨アキレス腱付着部骨折に対してスクリューとソフトワイヤーを用いて固定を行った3例[SA群]とsuture bridge法で手術を行った4例[SB群]計7例について報告する.荷重開始までに要した期間はSA群では5-6週間,SB群では術後2-3週であった.またSA群では1例に骨折部再転位,もう1例に骨折部遠位での再骨折を認めた.最終的には全例で骨癒合を得られ,皮膚壊死を起こさず経過した.踵骨アキレス腱付着部骨折では,術後の皮膚壊死,骨片再転位に注意が必要である.Suture bridge法は近年報告が増えている手術法で,骨片に直接インプラントを刺入する必要がなく,また骨片直上がlow profileであり有用な方法と考えられる.また,糖尿病を始めとする骨脆弱性疾患が背景にある症例では術後の再転位予防に慎重な後療法と経過観察を必要とする.

  • 平本 貴義
    2023 年 72 巻 2 号 p. 194-196
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    足関節外側靭帯損傷に対する手術法として靱帯修復術が一般的に行われるが,再建靭帯の強度不足や伸長変化などにより不安定性が残存したり再発が危惧されることがあり,このような症例に対しsuture tapeを用いた靱帯補強術(InternalBrace™)の良好な成績が報告されている.suture tapeを用いた靱帯補強術の治療成績を検討した.12例(男性3例3足,女性8例9足)を対象とした.平均年齢は48.6±16.5歳,平均経過観察期間は26.7±15.1歳であった.talar tilt angleは術前15.0度が術後3.8度に,anterior drawer distanceは7.6 mmから5.0 mmに,JSSF scaleは62.5点から88.9点に,K-P scoreは42.2点が90.1点にそれぞれ優位に改善した.靱帯補強術の治療成績はおおむね良好であった.

  • 植田 博也, 向田 賢市, 島田 幸典, 森田 周作
    2023 年 72 巻 2 号 p. 197-200
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は,糖尿病,類天疱瘡(ステロイド服用中),慢性心不全,慢性腎不全など多くの既往のある90歳男性.入院前日より発熱,右下腿の発赤腫脹等認め当院救急搬送された.右下腿水疱部の試験切開施行しNSTIを疑ったが,循環動態が非常に不安定であったため麻酔下での広範なデブリドマンは施行困難であった.創部のグラム染色からはレンサ球菌の関与が疑われ,創培養でG群溶血性レンサ球菌を認めた.ICUでの全身管理,局所の可及的なデブリドマンを継続することにより感染を鎮静化させたのちNPWTi-d(間欠的洗浄を伴う陰圧閉鎖療法)を行った.局所の肉芽形成は良好で入院78日後に療養型病院に転院となった.

  • 中尾 公勇, 中添 悠介, 宮本 俊之, 田口 憲士, 米倉 暁彦, 岡崎 成弘, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 2 号 p. 201-205
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】開大型高位脛骨骨切り術(Open wedge high tibial osteotomy, 以下OWHTO)後感染に対して矯正角を保ったまま感染沈静化が得られた症例を経験したので報告する.【症例】60代男性.他院で変形性膝関節症に対してOWHTOを施行.術後早期から手術創の発赤を認め,症状改善なく術後5週に当科紹介となった.脛骨近位内側の手術創感染に加えヒンジ骨折(type 3)が原因と考えられる化膿性膝関節炎を併発し,関節穿刺液から黄色ブドウ球菌を検出した.インプラント温存は不可能と判断し,Masquelet法に準じる軟部組織再建を併用したStaged managementによる治療を行い,矯正角を保ったまま感染沈静化が得られた.【考察】OWHTO術後感染は1~5% 程度発生するとされ,沈静化が得られても機能障害や矯正損失が問題となることが多い.術後感染に対して,早期発見と迅速な対応,及び治療戦略が重要と考えられた.

  • 高橋 洋平, 武藤 正記, 藤澤 武慶, 片岡 秀雄, 山下 陽輔, 安部 幸雄
    2023 年 72 巻 2 号 p. 206-208
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    化膿性関節炎に関連した心血管系の感染症についての報告は散見される.化膿性関節炎の15% に感染性心内膜炎を合併していたとする報告もある.感染性心内膜炎に続発した化膿性膝関節炎と,化膿性肩関節炎が原因となった感染性大動脈瘤を経験したため報告する.症例1:60歳女性.化膿性膝関節炎に対する術前の心エコーで感染性心内膜炎と診断され,心臓血管外科と合同で手術を行った.症例2:67歳女性.化膿性肩関節炎に対して鏡視下洗浄を行ったが,術後4日目から腹痛の訴えが続いた.CTで腹部大動脈壁の肥厚を認め,感染性大動脈瘤の診断で心臓血管外科で人工血管置換が行われた.菌血症を伴う骨関節の感染症では,心血管系を含む他臓器の感染を念頭に置いて治療を行う必要があると考える.

  • 徳永 修, 島内 卓, 黒石 聖, 巣山 みどり, 高橋 祐介, 酒井 隆士郎, 野口 康男, 江口 正雄
    2023 年 72 巻 2 号 p. 209-211
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【背景】TKA術後の屈曲制限に対して早期のマニプレーションは有効であるが,その際の疼痛が課題である.TKA術後鎮痛には硬膜外麻酔(以下EA)や内転筋管ブロック(以下ACB)が有効とされる.今回,当院で行った術後マニプレーション時の鎮痛,可動域改善目的としてEAとACBを比較・検討した.【対象と方法】2020年4月から2022年1月まで当院で初回TKA施行された患者87名を対象に術後7日目にEA下,8日目にACB下にマニプレーションを実施し,実施前後の可動域,疼痛をそれぞれ比較した.【結果】EA実施後に可動域の改善を認め,ACB実施後も可動域の改善を認めた.EAとACB間では実施後における可動域改善には有意差を認めなかった.NRSによる評価ではEA実施後には疼痛改善を認めたが,ACB実施後の疼痛改善を認めなかった.EAとACBの比較では患者満足度はほぼ同数(28対25)だった.ACBはマニプレーション時の可動域改善目的として有用であることが示唆された.

  • 倉員 太志, 赤崎 幸穂, 池村 聡, 藤原 稔史, 津嶋 秀俊, 原 大介, 濵井 敏, 川原 慎也, 山田 久方, 中島 康晴
    2023 年 72 巻 2 号 p. 212-214
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】当院における関節リウマチ(RA)に対する人工膝関節全置換術(TKA)の患者背景の変遷を調査し,長期患者立脚評価を行った.【対象と方法】2001年~2015年に当院で施行されたTKA数の推移を調査した.同期間に施行されたRAに対するTKA(RA-TKA)158例で術前の患者背景を解析した.同158例から現在の年齢が80歳以下である52例72膝を抽出し,Knee Society Score(KSS)を送付した.返答のあった28例38膝でKSSの各項目(膝の症状,満足度,手術に関する期待度)における点数,各項目に影響を与えうる因子に関して統計解析を行った.【結果】RA-TKAの症例数は減少し,TKA患者の術前の血液検査で炎症所見は有意に低下傾向であった.術後平均14年のRA-TKAのKSSのスコアは,当院にて施行された変形性膝関節症に対するTKAの術後平均4年成績と同等であった.【考察】薬物療法の変遷の影響と思われるRA-TKA数の減少傾向を認めた.術後長期のKSSは比較的良好であったが,その影響因子の解明が今後の課題である.

  • 森 達哉, 河野 勤, 田代 泰隆, 加治 浩三, 鬼塚 俊宏, 今村 寿宏, 松延 知哉, 花田 麻須大, 平本 貴義, 三浦 裕正
    2023 年 72 巻 2 号 p. 215-217
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】高位脛骨骨切り術において,膝蓋骨低位による膝蓋大腿関節症を懸念し,脛骨粗面を遠位に切り下げるOWDTOの報告が散見される.今回,脛骨粗面の切り方の違いによる術後骨形成について検討した.【方法】対象は,演者執刀の高位脛骨骨切り術44例で,OWDTO(以下D群)21例,近位切り上げのOWHTO(以下H群)23例である.検討項目はアライメント評価,後傾角度,術前後膝蓋骨高,脛骨粗面の厚さ,骨形成時期とした.【結果】術後後傾角度はD群10度,P群7.9度とD群で有意に大きかった.膝蓋骨高は術前後の変化においてH群で有意に低位になっていた.脛骨粗面の厚さは,D群14.9 mm,H群11.1 mmと有意にD群で厚かった.骨形成時期について,D群5.4ヶ月,H群3.9ヶ月と有意にH群が早かった.【考察】OWDTOは,膝蓋骨低位を防ぐ有用な方法であるが,脛骨粗面が厚く,後傾角度が大きくなりやすくなり,骨形成がOWHTOに比較すると遅くなる可能性が示唆された.

  • 石原 和明, 川野 啓介, 木戸 義隆, 高橋 巧, 小薗 敬洋, 栗原 典近
    2023 年 72 巻 2 号 p. 218-220
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    小児の前腕骨骨折後の偽関節は稀であるが,起こりうる合併症である.症例:6歳,女児,転倒し受傷した.左前腕尺側にピンホール状の開放創を認め,画像上は橈尺骨遠位端骨折を認めた.同日ピンニングを行い術後6週はギブス固定を施行した.術後10週の時点でも骨折部の癒合はなく,周囲の骨硬化像が目立ってきたため,造影MRIを施行したところ骨折部を主体とした浮腫性変化や異常増強効果が目立ち感染が疑われた.感染による偽関節と判断し,術後15週で感染部の掻爬と創外固定を施行した.8週で骨癒合を確認し創外固定を抜去した.受傷10ヶ月後の時点で,握力に左右差はあるものの可動域に左右差はなく経過している.今回初回の不十分な固定,開放骨折,感染及び観血的整復術が誘因となって偽関節を生じた.治療は成人に準じて感染部の掻爬および強固な固定となるが本症例において創外固定は有用であった.

  • 向井 順哉, 志田 崇之, 宮坂 悟
    2023 年 72 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    比較的稀な小児上腕骨遠位T-condylar fractureに対し手術を行った1例を報告する.患者は8歳男児.走っている際に転倒,右肘を打撲した.右肘外側に擦過創があり,神経血管損傷所見はなかった.単純X線は右上腕骨顆上骨折(Gertland 3A)に加え関節面へ骨折線があり,T-condylar fractureを呈していた.単純CTで遠位端の転位はわずかで内側皮質の多骨片化がみられた.手術は2本のKirschner鋼線(K-W)で顆間を固定し,3本のK-Wで遠位骨片と近位を固定した.術後は前腕回内位でギプス固定を行い,術後6週で抜線した.受傷後6ヶ月経過し,前腕回内・回外に健患差はないが,わずかな肘関節屈曲制限,生理的外反の減少があり,経過観察中である.本症例は内側皮質多骨片化と関節面へ骨折線があり,特に術後整復位損失が生じる可能性があった.小児上腕骨遠位T-condylar fractureは術中の固定力増加,過矯正,術後外固定の工夫等,術後内反肘変形のリスクを念頭に置き治療する必要がある.

  • 市川 賢, 中村 厚彦, 稲光 秀明, 秀島 義章, 重田 幸一, 大串 美紗子, 深川 遼, 尾上 英俊
    2023 年 72 巻 2 号 p. 225-227
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【要旨】尺骨の急性塑性変形を伴う小児Monteggia脱臼骨折の報告は散見されるが,橈骨の急性塑性変形を伴う小児Monteggia脱臼骨折の報告は少ない.今回,稀な橈骨急性塑性変形に伴った小児Monteggia脱臼骨折(尺骨骨幹部骨折,橈骨頭脱臼)の症例を経験したので報告する.症例は,8歳男児.公園の遊具から転落して受傷し救急搬送された.左尺骨骨幹部骨折と橈骨頭前外側脱臼,橈骨急性塑性変形(角状変形:21度)を認めた.受傷当日,全身麻酔下に橈骨頭脱臼整復と尺骨骨幹部骨折の整復固定を行い,橈骨急性塑性変形に対して徒手整復を行った.術後は4週間の外固定を行った.術後8か月で視診上の変形は無く,疼痛や可動域制限を認めていない.前腕部の重度塑性変形は,整容上の変形や前腕の回旋障害を生じる可能性がある.今回,受傷早期に手術加療を行い経過は良好であった.

  • 澤園 啓明, 篠原 直弘, 増田 裕介, 西川 拓朗, 佐々木 裕美, 永野 聡, 谷口 昇
    2023 年 72 巻 2 号 p. 228-231
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    壊血病はビタミンC欠乏により微小血管の損傷,出血をきたす疾患である.今回,大腿骨骨腫瘍を疑われ受診した1例を経験したので報告する.症例:10歳男児.左下肢痛にて前医受診し,MRIで大腿骨に輝度変化を認め,当院小児科紹介受診した.画像より骨腫瘍を疑い組織試験採取を施行したが血腫の診断であった.その後症状遷延したが,歯肉腫脹と出血,併存症として自閉スペクトラム症による著しい偏食があることから壊血病が疑われ,血中ビタミンC濃度の異常低値を確認し診断に至った.ビタミンC補充療法後は疼痛改善し,画像所見も改善を認めた.考察:現代社会では壊血病の発症はほぼ認めないが,近年,発達障害児における偏食やその他の栄養障害に伴う壊血病の報告が散見される.小児壊血病は,骨髄炎,敗血症性関節炎,骨軟部腫瘍,白血病,出血性疾患,リウマチ性疾患などとしばしば誤診されることが報告されている.本症例でも当初は悪性骨腫瘍との鑑別に難渋した.発達歴・既往歴から栄養障害が疑われる場合には鑑別疾患として挙げるべきである.

  • 吉川 誉士郎, 仲宗根 素子, 小浜 博太, 高江洲 美香, 宮田 佳英, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 2 号 p. 232-235
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    71歳,男性.自宅で就寝中に左肘腹側をハブに咬まれて受傷し,5時間後に当院を受診した.救急外来で抗生剤・破傷風トキソイド・抗毒素血清の投与を行った.前腕から上腕にかけて腫脹が著しく,コンパートメント症候群と診断し,受傷後7時間で緊急筋膜切開を施行した.手掌部から前腕掌側皮膚に波状皮膚切開行い,掌側筋膜,前腕背側,背側筋膜を切開した.皮膚は開放創とし局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy;NPWT)を開始した.術後6日間はICUで管理した.第2・第9・第11病日にデブリドマンを行いNPWTを継続した.第21病日に皮膚欠損部に対し左大腿より全層植皮を施行した.術後2年経過し,手関節伸展90°/屈曲70°,前腕回外70°/回内90°と可動域制限を認めたが握力は24㎏(健側29㎏)で日常生活や仕事に支障はない.

  • 村岡 智也, 村田 雅明, 村上 大気, 山下 尚寛, 青木 美帆
    2023 年 72 巻 2 号 p. 236-238
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】関節面が陥没した肘頭骨折に対して引き寄せ鋼線締結法(TBW)を2組用いるdouble TBW(DTBW)を行い,その治療成績を調査した.【対象】2017年1月以降Colton分類2C/2Dに対しDTBWを行った6例.【方法】陥没骨片を1組目のTBWで支持させ鋼線を前方皮質に貫いた.2組目のTBWは髄内遠位に挿入し鋼線近位端を鉤状に曲げた.関節面の矯正損失,骨癒合,肘関節可動域,Mayo Elbow Performance Score(MEPS),合併症について調査した.【結果】全例で関節面の矯正損失なく骨癒合が得られた.可動域は平均-9°~127°,MEPSは平均93.0点であった.合併症は表層感染が1例あった.鋼線のバックアウトは50% にみられたが皮膚刺激症状は生じなかった.【考察】関節面が陥没した肘頭骨折に対するDTBWの治療成績は良好であった.

  • 深瀬 昌悟, 島袋 孝尚, 金城 英雄, 山川 慶, 大城 裕理, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 2 号 p. 239-241
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脊椎手術において特に硬膜切開・縫合をした際の重篤な合併症の一つとして遠隔性頭蓋内出血が知られており,術後の頭部画像評価の重要性が認識されている.今回,硬膜処置を行った症例に対し,症状の有無にかかわらず術後に頭部MRIを評価したので報告する.【対象および方法】2019年7月~2022年2月の期間で硬膜処置を行った23症例を対象に,頭部MRI異常所見の有無,頭部症状および四肢神経症状の変化を調査した.男性8例,女性15例,平均年齢57.8歳(25~86歳)であった.【結果】頭部MRIで,硬膜下血種を5例(20.8%),脳梗塞2例(8.3%),悪性腫瘍の脳転移1例(4.2%)をそれぞれ認めた.術前認めなかった頭痛を8例(33.3%),悪心嘔吐を7例(29.2%)に認めた.硬膜下血種を呈した5例中4例に頭痛を認めた.術後意識障害や四肢神経症状悪化を呈した症例はなかった.【考察】硬膜処置した手術に際して,頭部MRIは重篤な合併症を回避するために有用であると考えられた.

  • 井上 三四郎
    2023 年 72 巻 2 号 p. 242-246
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】運動器疾患との鑑別を要した神経疾患の特徴について検討すること【対象と方法】対象は2017年4月から2022年2月までの28例である.紹介元の診断名,神経疾患の診断名などについてカルテを用いて後ろ向きに調査した.【結果】男性20例女性8例,年齢の中央値は69歳(14-85)であった.他院もしくは院内からの紹介25例,救急車受診2例,腰椎椎間板ヘルニア術後で当科フォロー中1例ずつであった.腰部脊柱管狭窄症8例,頚椎症性脊髄症3例などの脊椎変性疾患と診断されていた.神経疾患名は,脳梗塞5例,パーキンソン病・脊髄梗塞 各3例,多系統脊髄萎縮症・HTLV-1関連脊髄症・サーファーズミエロパチー 各2例などであった.【考察】運動器疾患と神経疾患との鑑別は容易ではない.複数の目にさらすことを解決策の一つとして提案したい.

  • 倉光 正憲, 井田 敬大, ファン ジョージ, 森本 浩之, 山崎 慎
    2023 年 72 巻 2 号 p. 247-251
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    大腿骨転子部骨折に対してsliding lockした群と直接的整復をした群の治療成績を検討した.2019年2月から2021年6月までの大腿骨転子部骨折に対し当院でInterTANを使用し,術中に直接的整復もしくはsliding lockを行った症例のうち3か月以上経過観察可能であった27症例を対象とした.直接的整復群13例,sliding lock群14例であった.この両群において,年齢・性別・骨折型(中野3DCT分類)・手術時間・術後合併症・術後整復位・Tip Apex Distance(TAD)・sliding量・swing motion(SM)・歩容状態の変化を比較検討した.年齢・性別・3DCT分類・手術時間に両群に有意差は認めず,sliding lock群には術後整復位不良(髄内型)が多かったにも関わらず,両群間にsliding量・SM・歩容状態・合併症に両群間に有意差は認めなかった.ラグスクリュー挿入後に髄内型となった場合,過度なslidingを防ぐためにセットスクリューの使用を考慮することが望ましいと考える.

  • ~スライディング量の観点から~
    古谷 武大, 河野 裕介, 中村 哲郎, 岩崎 賢優, 土持 兼信, 畑中 敬之, 松口 俊央, 清原 壮登, 大森 裕己, 土屋 邦喜
    2023 年 72 巻 2 号 p. 252-255
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨転子部骨折の骨折型,術後整復位とラグスクリュースライディング量の関係を検討すること.【方法】2019年7月~2021年6月に施行した大腿骨転子部骨折手術のうち,術後4ヶ月以上フォローし得た71例72関節(平均年齢85歳)を対象とした.骨折型は中野3D-CT分類,術後整復位は術後単純X線側面像の生田分類で評価した.スライディング量は術直後と術後4ヶ月の単純X線正面像を比較した.【結果】Subtype別の安定型骨折/不安定型骨折のスライディング量はsubtype Nにのみ有意差を認め,3.9 mm/6.7 mm(p=0.049)であった.不安定型の術後subtype A/Nのスライディング量は3.4 mm/6.7 mm(p=0.030)でありsubtype Nで有意に大きかった.術後4ヶ月でのsubtype N→Pの矯正損失率は安定型42%(13/31),不安定型88%(7/8)であり,不安定型で有意に高率であった(p=0.044).【結論】不安定型大腿骨転子部骨折ではスライディング量の観点からsubtype Nを許容せず,subtype Aへの整復が望ましい.

  • 兼田 慎太郎, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘, 太田 浩二, 大崎 佑一郎, 江崎 克樹, 岸川 準, 木戸 麻理子, 井上 逸人, ...
    2023 年 72 巻 2 号 p. 256-261
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【はじめに】不安定型の大腿骨転子部骨折に対する,セメント補強型髄内釘の短期成績について調査する.【対象及び方法】2021年4月から2022年1月,大腿骨転子部骨折に対し骨接合術を施行した29例(男6,女23)を骨頭内ブレードを骨セメントで補強したセメント群と,セメントを用いないショートネイルを使用した非セメント群に分けて比較検討した.セメント群は8例,平均年齢92.3歳,非セメント群は21例,平均年齢89.0歳であった.評価項目はTAD(tips apex distance),スライディング量,手術時間,術中透視時間とし,観察期間は3ヶ月で,t検定を用い統計学的解析を行った.【結果】TAD(mm)はセメント群:13.4 vs非セメント群:14.2,スライディング量(mm)はセメント群:1.83 vs非セメント群:2.6で有意差はなかった.カットアウトや再手術に至った症例は両群いずれも認めなかった.手術時間(分)はセメント群:82.7 vs非セメント群:86.5,術中透視時間(分)はセメント群:2.62 vs非セメント群:1.97でこちらも有意差はなかった.【考察】Unsayら(2020年)はCemented TFNAと他のネイルを比較し非劣性と報告している.我々は両群間においてスライディング量や術後のカットアウトに差がみられると仮定して調査を行ったが,今回の調査では有意差は認めなかった.今後経過観察を継続し,中長期的有用性についても検討していく.

  • 陣林 秀紀, 宇都宮 健, 小宮山 敬祐, 美浦 辰彦, 園田 和彦, 藤村 謙次郎, 浜崎 晶彦, 名取 孝弘, 樺山 寛光, 稲員 千穂 ...
    2023 年 72 巻 2 号 p. 262-265
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    [背景]大腿骨転子部骨折ではK-wireやエレバトリウムを用いた直接的整復を要する場合もあるとされるが,その効果を評価した報告は少ない.今回,直接的整復が術後整復位の保持に与える影響を調査した.[方法]2018年12月から当院で同一機種の髄内釘を用い手術を施行したJensen分類TypeⅢ-Ⅴの51例を対象とし,非観血的整復群(IR群27例)と直接的整復群(DR群24例)の2群間で,術直後から術後2週での整復位の変化とsliding量について単純X線像を用いて比較した.[結果]IR群6例(24%)が術直後subtype Nから術後2週でsubtype Pへ矯正損失した一方,DR群全例でsubtype NまたはAに保持された(p=0.02).sliding量の平均はIR群2.1 mm,DR群2.2 mmであった(p=0.96).術後単純CTを撮像し得たDR群の13例全例で前内方の骨性支持を得ていた.[考察]直接的整復は非観血的整復と比べ,より確実な骨性支持の獲得と術後整復位の保持に寄与する可能性が示唆された.

  • 高橋 建吾, 領木 良浩, 湯浅 伸也, 小宮 節郎, 新門 裕三
    2023 年 72 巻 2 号 p. 266-270
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    頸椎前方除圧固定術は術後に移植骨やケージが脱転する合併症を生じることがある.プレートを設置して脱転を予防する方法も有効であるが,食道への刺激になったりプレートやスクリューが脱転する等の合併症も生じうる.このような問題に対して当院では頸椎前方除圧固定術においてプレートとスペーサーが一体化したインプラントを採用している.本インプラントは初期固定制が良好であり頸椎多椎間手術の症例であっても外固定期間と入院期間の短縮が可能となった.

  • 仲宗根 哲, 山川 慶, 翁長 正道, 島袋 孝尚, 金城 英雄, 伊藝 尚弘, 與那嶺 隆則, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 2 号 p. 271-274
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    症例:65歳女性.5年前から腰痛のため歩行が困難であった.2年前に近医を受診し,Hip Spine Syndromeと診断され,当院紹介された.単純レ線像ではcobb角33°(L1-L4),LL(lumbar lordosis)-15°の脊柱後側彎変形および左変形性股関節症を認めた.立位で骨盤は20°以上後傾し,キャスターでの歩行は100 mが限界であった.1年前に成人脊柱変形に対して第8胸椎~骨盤までの多椎間TLIFを併用した後方矯正固定術を行い,腰痛および左股関節痛が改善し,杖歩行が可能となった.しかし,徐々に左股関節痛が増強し,10カ月前に仰臥位前方アプローチ(DAA)にてDual mobility cupを用いた人工股関節置換術(THA)を行った.術翌日よりリハビリテーションを行い,術後3週で自宅退院した.現在,腰痛,左股関節痛なく,独歩可能で,脱臼は認めていない.考察:成人脊柱変形矯正後の変形性股関節症に対してDAAによる脱臼抵抗性のあるDual mobility cupを用いたTHAは有用であると思われた.

  • 當山 全哉, 勢理客 久, 比嘉 勝一郎, 屋良 哲也, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 2 号 p. 275-279
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    76歳男性.主訴:右手指巧緻障害,右挙上障害,歩行困難.MRIでは歯突起後方偽腫瘍による脊髄圧迫所見を認めた.C1後弓切除術のみを施行した.術後3日目より独歩が安定し,術後3ヵ月で右手指巧緻障害が改善した.腫瘤の前後径は,術前6.5 mm,術後1年目6.2 mm,術後2年目5.7 mmと軽度縮小した.JOAスコアは術前9点が術後17点へ改善し,改善率は100% であった.本症例は環軸関節の不安定性を伴わない特発性歯突起後方偽腫瘍と考えられ,C1後弓切除術のみの治療で良好な経過であった.

  • 畠 邦晃, 水溜 正也, 井上 哲二, 川谷 洋右, 吉野 孝博, 中西 浩一朗, 佐々木 一駿, 阿部 靖之
    2023 年 72 巻 2 号 p. 280-283
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】透析患者では腰椎椎体間固定術後の骨癒合率が低く,成績不良となる症例も散見される.当科での手術成績について非透析群,透析群を比較し報告する.【対象と方法】2012年1月から2020年9月までに,当院で腰椎椎体間固定術を行った190例のうち術後1年以上のCT評価が可能であった110例123椎間を対象とした.平均フォローアップ期間は術後2年6ヶ月であり,CTフォロー期間は平均1年10ヶ月であった.CTは経時的に評価を行い,骨性架橋を認めたものを骨癒合ありとした.【結果】骨癒合率は全椎間で60.2% であった.非透析群67.6%,透析群23.8% で有意差を認め,透析+PEEKケージ群で骨癒合率が著明に低かった.【考察】透析群では骨癒合率が低く,今後は腸骨からの骨移植なども検討が必要と思われた.CTを用いた骨癒合判定には長期のフォローアップを要すると考えられた.

  • 山口 雄一, 浅見 昭彦, 橋本 哲, 田島 智徳, 伊藤 恵里子, 梅木 駿
    2023 年 72 巻 2 号 p. 284-286
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】特発性手根管症候群(CTS)の電気生理学的重症度と患者立脚型評価尺度(Hand20)との関連性について年齢層別に検討することである.【対象と方法】2013年5月から2016年1月に当院で特発性CTSに対し鏡視下手根管開放術を行った152例179手のうち,術前にHand20を評価した29例32手を対象とし,60歳未満と60歳以上の2群に分け,術前の短母指外転筋運動神経終末潜時(APB-TL)とHand20との関連について調査した.【結果】60歳未満では,APB-TLとHand20の項目6にのみ有意な正の相関を認めた.60歳以上では,APB-TLとHand20に有意な相関を認めなかった.【考察】項目6は,CTSで障害される筋肉の一つであるAPBに関連する単純な動作についての項目である.そのため,60歳未満のCTS患者では,APBの筋力低下がCTSの重症度の指標となりうることが示唆された.一方で,60歳以上のCTS患者では,変形性母指CM関節症の罹患率が高く,それに伴うAPBの筋力低下の影響もあるためにAPB-TLとHand20に相関を認めなかったと考えられた.

  • 神保 幸太郎, 古森 元崇, 牧 悠之, 西村 大幹, 高見 諒太, 二見 俊人, 中島 帆奈美, 戸次 将史, 井手 洋平, 川﨑 優二
    2023 年 72 巻 2 号 p. 287-291
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は43歳,男性.主訴は腰背部痛.HIV感染症により1年半前にAIDSを発症し抗レトロウイルス療法を施行.免疫再構築症候群である非結核性抗酸菌症による脊椎炎を合併した.運動麻痺および排尿障害が出現したため除圧固定術を施行したが骨移植を併用しなかった.疼痛が消失し独歩可能となっていたが,術後1年6か月で腰背部にボキッと音がして疼痛が再燃,X線でロッドが折損していた.ロッドのみ抜去し4ロッドに入れ替えて再度固定術を施行したが骨移植を併用しなかった.術後3年で疼痛なく独歩可能である.CTでスクリューの緩みは無いが椎体間の骨性癒合が得られていない.HIV感染症は抗レトロウイルス療法によって予後が飛躍的に改善していること,骨性癒合が得られにくいことを念頭に置き術式を検討すべきである.

  • Fit-and-fill stemとTaper wedge stemとの比較
    金海 光祐, 池村 聡, 本村 悟朗, 濵井 敏, 藤井 政徳, 川原 慎也, 佐藤 太志, 塩本 喬平, 中島 康晴
    2023 年 72 巻 2 号 p. 292-294
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】Dorr type Cに対するTHAにおけるステム沈下(Subsidence)に関してFit-and-fill stemとTaper wedge stemで比較検討すること.【方法】Dorr type Cに対してPrimary THAを行ったFit-and-fill stem群48例,Taper wedge stem群43例を対象とした.患者背景として疾患,性別,年齢,BMIを調査した.Subsidence量は術直後と術後1週,術後1週と術後6週,術直後と術後6週の3ポイントでX線を用いて評価した.【結果】両群間で患者背景に有意差は認めなかった.術直後から術後6週,術後1週から術後6週でのSubsidence量は,Fit-and-fill stem群に比べTaper wedge stem群の方が有意に小さかった.また,3 mmを超えるSubsidenceは,Fit-and-fill stem群で8例,Taper wedge stem群で1例に認め有意にFit-and-fill stem群で多かった.多変量解析の結果,ステムの種類が3 mmを超えるSubsidenceに影響を与える独立した因子であった.【結語】本研究結果からDorr type CにはFit-and-fill stemよりTaper wedge stemの方が適していると考えられた.

  • 岸川 準, 幸 博和, 久保田 健介, 小早川 和, 飯田 圭一郎, 川口 謙一, 松本 嘉寛, 坂井 宏旭, 河野 修, 中島 康晴, 前 ...
    2023 年 72 巻 2 号 p. 295-298
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    総合せき損センターにおける腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ(ヘルニコア®)椎間板内投与の治療効果について検討した.同院でコンドリアーゼ椎間板内投与を行い,投与後3ヶ月間フォローし得た7症例について,腰痛・殿部下肢痛・殿部下肢の痺れを調査した.いずれの項目でもVASは有意に低下し,JOAに関しても疼痛関連障害・社会生活障害の項目で有意な改善を認めた.さらに,投与翌日の症状改善効果についても検討を行った.対象はヘルニコア椎間板内投与後翌日に評価し得た7症例であり,腰痛のVASは統計学的に有意な改善を認め,下肢痛は改善の傾向が見られた.今回の症例からは,疼痛が高度であっても投与後早期から治療効果が得られる症例もあり,適応の症例は一般的に考えられているより広い可能性があることが示唆された.

  • 福島 俊, 松延 知哉, 前川 啓, 岩本 幸英
    2023 年 72 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    【目的】悪性軟部腫瘍の広範切除術では創の一期的な縫合閉鎖が不能な例をしばしば経験する.このような症例に対して我々は全層植皮術と局所陰圧閉鎖療法(NPWT)を行っているためその成績を報告する.【方法】2016年5月から2018年12月までに悪性軟部腫瘍広範切除術後に全層植皮術とNPWTを行った12症例を対象とした.男性8例,女性4例,手術時平均年齢は71.9歳であり,組織型は粘液線維肉腫5例,脱分化型脂肪肉腫1例,粘液型脂肪肉腫1例,平滑筋肉腫1例,横紋筋肉腫2例,粘液炎症性線維芽細胞肉腫1例,紡錘形細胞肉腫1例だった.【結果】NPWTの装着期間は平均12.4日間(5~15)だった.局所の感染はなく,生着率は平均90%(60~100)だった.平均経過観察期間は11.3か月だった.【結論】全層植皮術とNPWTの組み合わせで良好な植皮片の生着が得られ,創閉鎖に有用と考えられた.

  • 正木 久美, 中村 憲明, 山本 慎太郎, 都甲 渓, 丸山 夏希, 武藤 亮, 大城 朋之
    2023 年 72 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    高度な土壌汚染を伴う開放骨折に対して,近年,骨軟部組織感染症の治療及び予防への有用性が報告されている持続的局所抗菌薬灌流(以下,CLAP)療法の早期併用を行い,感染を予防できた1例を経験したため報告する.症例は68歳男性.作業中耕運機に巻き込まれて受傷し,当院へ搬送.高度な汚染を伴う膝蓋骨開放骨折と膝蓋靱帯断裂を認め,同日緊急でデブリドマンを施行.翌日2 nd Lookを行い,CLAPを併用した.受傷6日目に膝蓋骨骨接合術を施行.受傷22日目に膝蓋靱帯再建術を施行しCLAPを終了した.受傷8週で自宅退院とし術後5ヶ月で歩行は安定しており,膝関節の可動域も良好である.GustiloⅢの開放骨折や土壌汚染を伴う骨折に対し,十分なデブリドマンの後,CLAPを併用した感染予防を行い,早期内固定が可能であった結果良好な経過が得られた.

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